SSブログ

『貴族探偵対女探偵』麻耶雄嵩 [読書]

貴族探偵対女探偵

貴族探偵対女探偵

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/10/25
  • メディア: 単行本
名探偵・高徳愛香は事件の謎を解こうとするたびに、口髭を生やした妙な男性にことごとく邪魔されてしまい…。シリーズ第2弾。
召使たちに推理をさせる”貴族探偵”がカムバック!


今回は女探偵という、貴族探偵と対立する女性が新しく登場。探偵稼業をしっかりこなしている―はずだったけれど、どうも貴族探偵に関わると調子が狂ってしまい…?と、女探偵を視点に置いて謎の貴族探偵との駆け引きもしつつ事件の謎を解こうとする。

女探偵自身には実績もあり、てっきり貴族探偵を脅かす存在になる…のかと思いきや、蓋を開ければ(嫌々)ワトソン役になっていた。貴族探偵(の召使たち)の推理を際立たせるためなのか聡明なはずなのに推理を外すばかりで、最後ようやく決めたと思ったら…最後の最後まで貴族探偵にしてやられた気分で終わってしまった。悔しい!

もし続編があって女探偵も登場するのなら、ぜひ貴族探偵をあっと言わせるような展開に持ち込ませてほしいなー。


タグ:麻耶雄嵩
nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ: 

『レディ・ガンナーの大追跡 上下』茅田砂胡 [読書]

レディ・ガンナーの大追跡〈上〉 (角川スニーカー文庫)

レディ・ガンナーの大追跡〈上〉 (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 茅田 砂胡
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 文庫
レディ・ガンナーの大追跡〈下〉 (角川スニーカー文庫)

レディ・ガンナーの大追跡〈下〉 (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 茅田 砂胡
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2002/01/31
  • メディア: 文庫

キャサリンが描いたベラフォードの姿絵に魅せられた秘密結社は、ベラフォードを捕えようと画策する。自分の不注意が元で起こった騒動を知った彼女は、父親の制止を振り切って再び飛び出した。シリーズ第2弾。

冒険譚の色が押し出されていた前作では余り深く見られなかった、種族間の確執の根深さを今回思い知らされた。 上巻の中盤辺りまでは歴史的背景を説明していて、今現在の交流関係がやや難しいものだなーという印象は受けていたけれど、実際厳しい現実を目の当たりにすると、何とも言えない。ベラフォードたちを探すため旅に出たキャサリン(とニーナ)が行く先々で経験する認識の隔たりには、彼女の人間性が良いとしても決してそれだけではどうにもならないものもあって難しいなぁ。。彼らの溝は今後どのようになるのだろう。。。キャサリン嬢の旅は今回も刺激的なものではあったけれど、ドキドキワクワクするような感じではない緊迫したものだった。

メインキャラの配分がとっても絶妙で好きなんだなーと今回で確信した。個性的な用心棒たちに、銃を難なく扱うキャサリンお嬢様、そして平凡といっていい侍女ニーナの組み合わせが良いね! 特にニーナの反応は一般人のそれであって、常識はずれなことばかりするキャラたちの中に一人いるだけで何だか安心してしまう。ちなみに今回<純血種>で沢山新しい顔が登場したけれど、特に<島梟>と<狐>のやり取りが面白くて好きでした。 お二方には、また是非登場してもらいたい。。

他種族が共存する世界では避けては通れない話だとは思うけれど、予想以上に重く厳しかったです。確かに、次はラブロマンス要素を読んでみたい。今回で明らかになった三つ巴状態やキャサリンとの関係がどうなるのか非常ーに気になります。


タグ:茅田砂胡
nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ: 

『レディ・ガンナーの冒険』茅田砂胡 [読書]

レディ・ガンナーの冒険 (角川文庫)

レディ・ガンナーの冒険 (角川文庫)

  • 作者: 茅田 砂胡
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/01/25
  • メディア: 文庫

「義を見てせざるは勇なりきり、です!」 幼馴染みが意に沿わない婚約をさせられそうになり、偽装婚約を立ててほしいとの手紙が送られてくる。ウィンスロウ家の令嬢キャサリンは、その性急な内容に首をかしげるも窮地に陥っている友人のため旅立つ決意をする。シリーズ第1巻。

痛快で、楽しかったー! 義のため人のために行動する…って、なんだろう少女版水戸黄門のような印象を受けた。 

『茅田砂胡前仕事』を読むにあたり未読のシリーズを読んでみようと思い、ちょうど新装版1巻の本作が目に入ったので読んでみた。 動物に転変できるような種族の人たちが共に在る世界は想像するだけでも非日常な光景で楽しかったなー。主人公キャサリンが旅の用心棒として雇った4人組はひと際スペシャルらしく、それぞれが持つ能力の特異さに所々で驚かされた。でもまだまだ顔見せの部分が大きかったかな。キャサリンと彼らの関係が今後どんな風に発展していくのか気になるところ。

あともう、茅田さんといえば芯の強い女性を本当に素敵に描くなー! 珍しく(?)他シリーズと比べれば、平凡に近いヒロインではないかなと思ったけれど、肝っ玉が据わったお嬢さんだよ! 見た目や特殊能力が個性溢れる周りに引けを取らない魅力的な少女の一貫した姿勢に、終始引っ張られるように読んでしまった。

ひとまず、一巻完結になってたけれど、これはもう続きも読まなきゃ。新装版待つのがもどかしいと思ったら、もう(旧版の)2巻手元にある不思議ー…。


タグ:茅田砂胡
nice!(5)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ: 

『冬虫夏草』梨木香歩 [読書]

冬虫夏草

冬虫夏草

  • 作者: 梨木 香歩
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/10/31
  • メディア: 単行本

亡き友の生家の守を託されている駆け出し文士、綿貫征四郎。行方知らずの愛犬ゴローを探しに、目撃情報があった鈴鹿山中に分け入った彼が目にしたものは―。『家守綺譚』に続く、綿貫征四郎が出会う不思議な出来事を描く。

まさかの続編でした。びっくり。(単発でも読めますが)

愛犬を探しに綿貫青年が旅する話なので舞台はがらりと変わっていたものの、前作同様に摩訶不思議な光景に出会えて嬉しくなる。ひとの世界で人外のものたちが違和感なく闊歩する、常識があっさり通じない世界にうっとりします。本人が知らぬうちに時の狭間に足を踏み入れたり(多分そうであろう’と匂わせたまま)元の世界へと戻ったりする、とあるお話が好きでした。 しっかし、綿貫青年が旅するきっかけになったゴローが、彼?自身の登場はないのに彼の関わるお話が奇妙のためか存在感が大きくて、それが何だか愉快でした。


タグ:梨木香歩
nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ: 

『菩提樹荘の殺人』有栖川有栖 [読書]

菩提樹荘の殺人

菩提樹荘の殺人

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/08/26
  • メディア: 単行本

高校時代に負ったアリスの失恋、大学時代の火村の名推理など、姿在りし日の彼らの物語を描く計4編の短編集。

<若さ>を共通のモチーフに置いた本作は学生時代のアリスや火村のエピソードがあったよ!

アリスが高校生の時に負った、失恋の話は過去2度読んだことはあるけれど続きにそんなことがあったとは。 20年以上に渡って続くシリーズなのにまだまだ新たな発見があるのだと驚きました。作中はサザエさん方式の為、アリスや火村は年を取りませんが扱う題材が近年の話題に沿ったものに感じたので、なんだか不思議な気持ちになったり。

今回、大学生時代の火村が名推理をした話がひとつあったけれど、34歳の今と余り変わっていない気が。火村の抱える過去について今後アリスが知ることになるのか気になる反面、このまま謎のままでいて欲しいような。いつかは読んでみたいけれど、すぐに解き明かされなくても良いのではないかとも思います。

漫才師から”うまい”と言われるようなアリスと火村の漫才じみた掛け合いは本作も調子が良くて何よりでした! 普段から漫才みたいな会話してるなぁ。


タグ:有栖川有栖
nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ: 

『リバーサイド・チルドレン』梓崎優 [読書]

リバーサイド・チルドレン (ミステリ・フロンティア)

リバーサイド・チルドレン (ミステリ・フロンティア)

  • 作者: 梓崎 優
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/09/11
  • メディア: 単行本

どうしようもなく辛いときには、星が代わりに泣いてくれるんだ。 日本人の少年ミサキはカンボジアで彷徨っているところをストリート・チルドレンに拾われる。厳しい環境の中でも仲間たちとの信頼がささやかな幸せと安息の生活をもたらしていた。だが、仲間の一人が殺人事件に巻き込まれたことでミサキの世界が一変する。

様々な思いが去来する。読み終えた後も何とも言えない感情にしばらく浸っていた。

ある決定的な事件が起きてからの展開は読む手が止まりかけそうになるほど、暴力的でなすすべがない。(高野和明さんの『ジェノサイド』を思い出した) そして、殺人事件を解決した先に知った真実に切なさとやるせなさに言葉もなくしてしまう。 それでも、かなしさに浸る物語ではなかった。
誰かの為に思いを込めて願うことが、祈りなのだと改めて思う一冊でした。 また読み返そうー。

そういえば、前作を読んでいる人には思わずニヤリとする展開もあったね! 本書を読む前は文庫化した『叫びと祈り』を読んで改めてこの作家さんの物語好きだなぁと再認識。3作目も首を長くして待とうと思います。


タグ:梓崎優
nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ: 

『黒猫の刹那あるいは卒論指導』森晶麿 [読書]

黒猫の刹那あるいは卒論指導 (ハヤカワ文庫JA)

黒猫の刹那あるいは卒論指導 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 森晶麿
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/11/07
  • メディア: 文庫

”もう少しだけ歩いて帰ろうか、モントレゾール君” 卒業を来年に控え卒論と進路に悩む「私」。ある日「私」は、唐草教授のゼミに見知らぬ青年を見つけて…。黒猫と付き人の出会いを描くシリーズ短編集。

読みたかった二人の出会い編がすぐ現実になり、嬉しさの余り小躍りした。

シリーズ第1作目『黒猫の遊歩あるいは美学講義』の3年前。出会いの話から二人が遭遇する事件や謎を、移ろう季節を感じながら、楽しく読みました。 出会ってから一年後には黒猫としばし離れ離れになってしまうのが分かっているからこそ、季節の移り変わりに少し敏感になってしまったのかもしれない。そして、二人の関係が少しずつ変化しているような気がして、…きゅんきゅんした! 本編を読む前の序章として読み始めても大丈夫な一冊。今までのを読んでいる人には、より面白く読める一冊。だね!

美学の辺りでは、1巻より入り込み易かったものの全てをきちんと理解できているかまだ自信が持て、て、ない。。でも、殺人などの物騒な事件が絡むものよりも、日常のなかで人の心をより深く見るように論じられる美学の方が、心地よく読めたと思う。
それにしても黒猫と付き人の距離感は、学生編でも絶妙でわしづかみにされた。本編の続編もすっごく楽しみです。
以下、有り余った衝動を吐き出す感想。長いので畳みます。

 

続く


タグ:森晶麿
nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ: 

かつくら2013秋号 [読書]

かつくら vol.8 2013秋

かつくら vol.8 2013秋

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 新紀元社
  • 発売日: 2013/10/25
  • メディア: 大型本

森見登美彦さん&田中芳樹さん特集。まだ読んでいない久々の長編新作『聖なる怠け者の冒険』についてインタビューで言及されていて、ますます読みたくなってきた。モリミー作品はほぼ読んでいるかなと思っていたけれど、まだいくつか読めていないものも発見したりと読みたい本が一気に増えた。

何より嬉しかったのが、「おこぼれ姫と円卓の騎士」シリーズの石田リンネさんインタビュー! 「おこぼれ姫」の制作背景が楽しかった。最初、主人公少年だったのか!とか。それはそれで面白そう。でも、憧れる女性主人公として据えられたレティの物語はとっても魅力的で(恋愛要素も盛り上がるし)、少年主人公は別の物語として読んでみたいな。
あとレティの相手役としてはデューク派だけれど、個人で見るとクレイグやノーザルツ公に持っていかれてます自分(笑)  レティの兄たちも素敵な御仁だし…振り返れば、「おこぼれ姫」本当魅力的な男性陣ばかりだ! あと7人も騎士が登場するのかと思うと…どんな男性なのか楽しみでしょうがない。

読者投稿のエドワード・ターナー氏(『開かせていただき光栄です』より)が美麗でうっとりしてしまった・・・! この方、いつも素敵な男性を描いてくださる。 

前回の振返り。『お面屋たまよし』読了。ふたりの兄弟が共に生きる道を探していく物語を描いた『ユリエルとグレン』の石川宏千花さんの新シリーズ。血は繋がっていないけれど兄弟同然に育った少年たちを主軸に、お面を巡って描かれる人の業と情が切なく優しく映り、しっとりした気分で読了。2巻もあるようなので、読む!
以下はチェック本。

太陽の塔 (新潮文庫) 天体議会(プラネット・ブルー) (河出文庫―BUNGEI Collection)

旋風は江を駆ける(上) (かぜ江シリーズ) (コバルト文庫)


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ: 

『貴族探偵』麻耶雄嵩 [読書]

貴族探偵 (集英社文庫)

貴族探偵 (集英社文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/10/18
  • メディア: 文庫

”あなたが推理するのではないですか””まさか。どうして私がそんな面倒なことを?” 殺人現場に突如現れたのは「貴族探偵」と名乗る男。警察への強力なコネと優秀な使用人を駆使し、彼は事件解決に介入する。シリーズ第1弾。

面白かったなー! 

さる高貴な出らしい「貴族探偵」が探偵役かと思えば、彼に仕える執事・メイド・運転手がそれぞれ「探偵」役となって推理を披露し、彼自身は決して推理することに立ち入らないという意外な立ち位置。 優雅にくつろいで、女性を口説くことに余念がないという印象ばかり残ってしまったよ…! 

…と、まずは貴族探偵というアクの強いキャラと意外な役割に目が行きがちだったけど、ミステリ面も楽しかった。 真相がひねくれているけれど、結構シンプルにイメージし易かったからかも。『春の声』とか、あのひねくれ具合が、意外とやみつきになってしまった。

徹底的なまでに推理をする気配がない「貴族探偵」。しかし、まだ何か秘めているのではと思わせられたり。どうやら続編もあるようなので、今の歪な推理方法も気に入りつつも、貴族探偵の新しい一面を覗けることを期待。

麻耶さんは『メルカトル鮎と美袋のための事件』と本書ぐらいしか読んでないけど、他の作品も気になった。まずは、長編の『翼ある闇』を手にとってみよ。 

(ちなみに…使用人たちの「御前様」呼びが、なんだか新鮮で好き)


タグ:麻耶雄嵩
nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ: 

『つれづれ、北野坂探偵舎 心理描写が足りてない』河野裕 [読書]

つれづれ、北野坂探偵舎    心理描写が足りてない (角川文庫)

つれづれ、北野坂探偵舎 心理描写が足りてない (角川文庫)

  • 作者: 河野 裕
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/09/25
  • メディア: 文庫

神戸北野坂の小さなカフェ「徒然珈琲」には、背を向け合って座る二人の男がいる。一人は作家、もう一人は元編集者の探偵だ。ある日、一人の女子校生が「死んだ親友の幽霊が探している本を見つけてほしい」と訪ねてきて…。シリーズ第1弾。

「サクラダリセット」シリーズの河野さん新作だ!

レーベルやジャンルが違っていて戸惑うも、透明感のある雰囲気が相変わらず素敵でした。舞い降りてきた謎を、まるで物語を紡ぐかのように推理していく手法は新鮮。作家が物語を作り、編集者が軌道を担当する。協力しながら謎を解決するのかと思えば、意見が分かれれば別行動に移ってしまう二人。一見仲が悪いようにも見えるけれど、互いを分かっているからこその行動も見えてきて…。探偵と助手という枠にとらわれない、気になるコンビが見つかりました。 

作中の作家・朽木曰くストーリーテラーである彼はただ物語を作り上げる立場であると言っているので、本質的に本シリーズは推理ものではないのかもなー。あと、副題の「心理描写が足りてない」と書かれているも、ひとの内面を時に抉るように描いていたなと。 今回のゲストたちそれぞれが向ける感情がとても友情の一言では片付けられない複雑で、繊細なものだったのが印象に残った。 ともあれ、作家と編集者が囚われている過去が、今後どう関わってゆくのか…物語の締め括りが予想出来なくて気になります。2巻も楽しみです。 

河野さんの本を読むと、ひどくセンチメタルな気分にさせられる。じんわり、沁み入る感じ。良いなぁこのひとの文章。


タグ:河野裕
nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ: 
ブログパーツ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。