恩田陸『蜜蜂と遠雷』
ここ数年の著作の中ではダントツにお気に入り。系統だと『チョコレートコスモス』を彷彿とするような、臨場感と興奮が味わえた。ピアノコンクールを舞台に挑む者たちの音の調べに魅了される。彼らが奏でる曲は正直知らないけれど、想像上で聞こえた気になる不思議さに、興奮と知らない体験からの恐怖がこった混ざった状態で読みふけた。冒頭から最後まで、興奮冷めず駆け抜けた一冊。
原田マハ『楽園のカンヴァス』
文字から情景を読み取り、想像を膨らませる。絵を知らなくても想像から楽しませて、ルソーの世界へどっぷり浸かれる一冊。新しい世界を知ることへの感動と歓び。感謝の気持ちで読了した。
小川一水『天冥の標1 メニー・メニー・シープ』
壮大なスペースオペラを、ついに手を出してしまった。面白すぎて興奮がしばらく冷めなかった一冊。おそらく各巻ごとに時代も舞台も主要人物たちが変わっていくようだけど、違う話のようでも実は色々と話は繋がっていて、巻が進むごとにその繋がりや、真相が分かってきて痺れる。1巻は壮大なSFの世界観を見せつけられ、2巻は地球上で発生したパンデミックもの、そして3巻は美少年が率いる宇宙戦闘もの!まだ3巻途中とはいえ、すっかりシリーズに魅了されている。どんな驚きや楽しみを見せてくれるだろう。
伊藤計測『ハーモニー』
犯罪や病気の無い調和された幸福な世界。蔓延っている負の要素を徹底的に排除した社会は、わたしという魂が存在しうる世界なのか。投げかけられた問いに、自分なりの答えを見つけては、また咀嚼して考えてこんでいく。もう著作が読めないは、本当に寂しい。
古野まほろ『ぐるりよざ殺人事件 セーラー服と機関銃』
独自の風習が構築された絶対的世界で突如起きた殺戮。迫りくる脅威に対し、少女たち持ち前の才能と機転をもって手口、動機、犯人像を畳みかけるように暴いていくラストには痺れた!
ちなみに今年初めて金田一耕助シリーズを読んだけど、かなり好みで、設定雰囲気展開が本シリーズは似ているなぁと。美少女、 閉鎖的な村、不気味な因習、おぞましい殺戮…。
パトリック・ジュースキント『香水 ある人殺しの物語』
文字を読んでいて匂いを感じ取る異常体験をした一冊。匂いたつ文章に眩暈がしそう。至高の匂いを求めて一心不乱に切り拓いていく男の一生が、その手段が不気味かつ鮮烈で、目が離せなかった。倫理に反した生き方を読んでいるのに、ブラックユーモアな雰囲気で面白く読んでしまった。
米原万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』
ロシア語通訳の著者がソビエト学校に通いプラハで過ごした少女時代と、旧友を訪ねて再びかの地に降り立った時の体験を綴ったエッセイ。少女の目を通してみた世界と、世情によって変わってしまった友人たちに向ける感情は何とも言えない。ふるさと―故郷とは何なのか。わたしが持つ考え、倫理観、思想はわたしだけの意思で決定されているのか。考える。
妹尾ゆふ子『翼の帰る処5・下』
祝・完結!何度も何度も繰り返し読んでは、ヤエトの視る世界に夢中になった。いつまでも読み続けたいシリーズだったので、完結は大変嬉しい反面、凄まじく寂しい。。。 神が人前で体現するファンタジー面にも興奮したけれど、人が息づいていると実感する何気ない日常(謀略やら戦闘やら物騒なことはあるものの、それをひっくるめて)がとてもいとおしく。最後まで楽しかった。
天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)
]]>
心揺さぶられ、また心ゆくまでこの物語を味わった。
本を読むことの歓びってこうだった。時間を忘れて、物語にのめり込み世界に浸る感覚。読み終えたときに、現実に戻ってくる眩暈のような感覚。 ただひたすら、夢中になれることの多幸感を思い出した。
挑戦者たちが生み出す音の調べは、曲を知らずとも映像で視えるような錯覚に陥って、興奮と同時に恐怖を抱かせる時間でした。初めて受ける衝撃は、快感と嫌悪を引き起こす。まさに挑戦者たちを評する側のキャラクタが抱いた感情を読者にも体感させる一冊だったのではないかなと。
文字を読んでいる状態で、視覚と聴覚も使われる錯覚に、興奮と同時に恐ろしさを感じてしまった。
曲目はほとんど知らなかったけれど、だからこそ、描かれる情景に自然と想像が膨らみ、圧倒され、より世界に引き込まれる。魔力だ、この本は・・・。濃密な時間でした。最後まで興奮が駆け抜けた一冊、本当に楽しかった。
]]>
匂い立つ文章に目眩がしそう。文字を読んでいるのに、同時に匂いを嗅いだような錯覚にも陥って、酔う・・・。
至高の匂いを求めて一心不乱に切り拓いていく男の一生が、その手段が不気味かつ鮮烈で、目が離せなかった。明らかに倫理に反した生き方を読んでいるのに、ブラックユーモアな雰囲気で面白く読んでしまう。 理解できない視点で進む物語は薄気味悪さが終始纏わりついているものの、でも気になって読み進めてしまいました。。
読み終えたあと自分の感情になかなか整理がつけられず。最初から奇天烈な物語も、香りを嗅いでる不可解さも、極めつけのラストが凄まじいのにサラッと描かれたことにも、読み終えてから色々と衝撃が遅れて来ているのかもしれないな。たぶん。
文字を読んでいるはずなのに、匂いを感じ取ってしまう、そんな錯覚をせずにはいられない気味の悪さ(料理ではない、普段意図せず嗅いでいる匂いを感じ取ってしまう)。匂いを発している本。不思議で、不気味だからこそ印象に残る読書体験だったなー。
]]>ハーモニー。犯罪や病気の無い調和された幸福な世界。蔓延っている負の要素を徹底的に排除した社会は、わたしという魂が存在しうる世界なのか。考え込んでしまう一冊…。
全体的に、物語を構成する世界の在り方や、構築するまでに至った人の感情の発想が面白かったけれど、物語の主軸であるトァン・ミァハ・キアンの三人少女が居たからこそ、のめりこんで読みふけたのかな。
トァンが辿り着いた真理を、物語最後の会話を、頭の中で繰り返し咀嚼していく。 トァンに向けたミァハの言葉を反芻しながら、彼女の意思を、感情を思いはせる。
『虐殺器官』『ハーモニー』を読んだ今だからこそ、改めて、次の物語を読みたかった。殺戮の世界、調和のとれた世界を描いて、その次の世界はどのような光景が映っていたのだろう。本当に、残念だけれど、この本を読めて本当に良かった。
]]>
なんだこの面白いやつはー!と内心叫びつつも、とんでもない虚脱感に襲われて読了。お、お、面白かった…。
個人的に話が濃密そうなファンタジー・SF系の長編作品はここ無意識に最近避けていた節があったので、久しぶりに手に取りました。
第1巻は世界観の説明面が強いものの、植民星に住む人や種族、そして勢力図が濃い! 出そろった人々たちが、様々な思惑や激情を孕みつつも非情な弾圧を加えている統治者に向けて戦う…話かと思ってたのに、下巻の最後で、全ての予想が(良い意味で)裏切られてしまった。こんなに出尽くして、盛り上がりきって…その後にどう話が続くんだ…?
かつて六つの勢力―【医師団】【宇宙軍】【恋人】【亡霊】【石工】【議会】それぞれの話を読んでみたいな。人体に電気を体内に取り込み海中でも呼吸できる《海の一統》たちの話とか(アクリラの風貌が、宇宙がテーマということもあって、某茅田作品に出る金髪の天使を彷彿とさせました)、個人的に石工(メイスン)たちの動向が、上下巻通してとても面白かった。古からの契約により人に支配され、考えることすら放棄してしまった種族たちの自己の尊厳の復活に至るまでの話が、熱い。
あと、小川さんの物語を読むのは本作が初めてだけど、こうも恋愛面のフラグがぼっこぼこに立ち上がってて驚いた。そして心構え持たせる間もなく絶望に叩き落すんですね…。文章も読む前からもっと硬い雰囲気かと思っていたので、随分読みやすかったなー。
今後、どんな風に話を持っていくのか非常に気になる!!!
天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)
天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)
]]>
とんだ飯テロ&異形もののシリーズだよ! 読むと何か物を入れたいような、口寂しい気分になる。
妖と引き立つお料理の描写には、つい「妖怪アパート」を思い出してしまうけれど、主人公は女子大生かつ妖たちの棲む異世界で孤立奮闘するところから始まるので、また違った面白さがありました。味方のいない頃から着実に居場所を作っていく強かな姿とお人よしな性格、そして巻を増すごとにお料理の描写がたまらなくクセになる。
彼女のお料理に対する姿勢の背景に隠れた過去―小さいころに助けてくれた白い妖の謎や、大旦那様との糖分(こちらは結構、長期戦の気配が…)など気になる要素があるなか、今回の3巻は気になる終わりであーっっ続きが待ち遠しくって仕方ない。。過去2巻は一巻ずつ話がまとまっていて最後にはほっこり幸せな気分に浸れたので、まさかの緊張感引きでした。いよいよ白い妖について核心に触れるのか。大旦那様との恋路(になるのか…)の進みも、天神屋のメンバーとの掛け合いも、、気になる!!
かくりよの宿飯 三 あやかしお宿に好敵手きました。 (富士見L文庫)
]]>
わ、わんこだ。…これが、わんこヒーローか!
びっくりするくらい彼が言葉を発するたびに、すべて犬が尻尾ブンブン振って「ワンワン!」と叫んでいるような幻聴が聞こえてきまして、、貴重な体験でした。眩しいくらいに一途で、好き!を隠さない年下わんこヒーローは、個人的に今まであまり読まなかったので新鮮だなー。
落ちこぼれヒロインと天才少年という組み合わせに惹かれて手に取ったものの、あくまで表面を指しているだけで、お互いの隠していた真実や、二人一組となり祝詞をもって敵と戦う設定が面白くて、一気に引き込まれた。特に戦闘シーン、歌い上げる姿が様になっていて、かっこいい。幻想的な視界が広がるような、想像がふくらむのが楽しかった。
個人的には、過保護で優しい友人たちの糖分を感じずにはいられないんですけど…主人公たちとは違った方向の面白いやり取りが垣間見れたので、次巻期待したいところ。あとヒーローの暴走気味な攻めの姿勢も楽しみ。
ロシア語通訳の著者がソビエト学校に通い様々な国の友人たちと過ごした少女時代を綴ったエッセイ。エッセイなのだけど、マリの友人である三人の少女のエピソードに、それぞれ臨場感あり物語を読むような感覚でした。そう、小説のような非現実な日常をマリ(著者)は過ごしたんだなぁ。なんとも言えない余韻が残る一冊で、この本を思い出すとおなかの芯のところが渦巻くような気分になります。。
民族や社会の思想って、何だろうと改めて問いかけられたような。ひとの奥底に根付くものや思想や政治的背景による対人関係を―少女の目を通してみた世界に圧倒されました。中でも表題にもなっているアーニャの話は衝撃的。自分の周りの環境によって人格はかたどられるとは思うけれど、それにしても激動する社会の中で身を置くためにはそうならざるを得なかったのか、それとも…。再会したときの著者の心境を思うと、複雑でした。
本当に読みごたえがあった!いつも読むようなジャンルとは全く異なるものだったので、新しい思想や考えに触れることも多くて、とてもおもしろい一冊!
小川洋子さんの文章は本当に美しくて、自分の中で嫌なものが取り払われて心穏やかな気分になる。
ただただ静謐で、穏やかな日常に満たされる。小川さんの作品を読むときは、独自の世界のまま陶酔させずに、目を背けたくなるようないやらしい現実も入れてくるので色んな気分にさせられるなぁ。人間の言葉を話さず、小鳥の言葉「ポーポー語」のみを話す兄と弟の生活は所謂、世間の目からすれば奇妙に映る光景で。ただそれは社会からの視点であって、二人のつつましい日常を脅かすものではない。振り返れば、兄と弟の暮らしを描いているのは本書のうち半分にも満たされていないのだけれど、とても印象に残る。
それにしても、表題がひらがなには意味が込められてたのか…。
ひとりになった弟の暮らしを最後まで読み終えると、思わず最初の数頁を読み返して、ようやく読み終えた実感を持ちました。穏やかな余韻に浸った一冊。
面白かったー!!良いコンビものでした。
初読み作家さんですが、初めて読む人の文章はとても新鮮だなぁとしみじみ。進め方も登場人物の話し方や台詞回しも目新しくって面白い。…にしても面白かった。
宝石をめぐる人間関係が、ほろ苦さが残りつつもあたたかみのあるドラマがあって、夢中になりました。+単純に宝石への探究心が出てきてわくわくしながら読んだ!宝石にまつわる蘊蓄が登場人物の話に絡んで繋がった時も良かったけれど、宝石という新しい知識を吸収できるのが面白かったなー。宝石にも和名があるんだね・・話に出ていた「ざくろ石」という言葉がとっても粋な響きで好き。
主人公の誤解を招くような発言が玉に瑕だけど、素直さ故と思えば微笑ましい…のかな…。態度が分かりやすい助手と、感情が分かりにくい(けど、読み進めるとクセが分かってきて読者にとっては分かりやすくなってきている。。)雇用主という楽しいコンビが増えました。続き出てほしい!
西尾さんの本読むの久しぶりだな!一番夢中になっていた時期(戯言シリーズ)から数年ぶりに新作を読みます。講談社タイガという目新しいレーベル名のラインナップが気になったのもあるけれど、「美少年」と「探偵団」と名がついて、しかも超個性のキャラクターを生み出す西尾さんとあっては、読まねば!と思い、つい…。変わってなかった!軽快な言葉のやり取りや、次第にスピードが乗って最後までぶっ飛ぶ展開の壊れ具合とか。シリーズ比大人しめかなと思っていたキャラクターたちも、一筋縄ではいかない美少年たちばかりで、彼らに振り回される唯一のヒロイン・眉美ちゃんの今後が心配…ではなく楽しみです。
すっかり好きになって、さっそく2巻も読みましたが、1巻で目立っていなかったメンバーにスポットライトが当たったり、美少年探偵団に対抗勢力が出てきたり、眉美ちゃんの立ち位置がだんだん確立してきたりと、ますます楽しい展開になってました。今後の刊行予定が、さすがの西尾さんペースなので、あまり間をおかずに新刊読めるみたいです。気になる!
昨年の11月にて、当ブログも開設から10周年を迎えました。 開設当初から大分環境も変わり、年々、浮き沈みが一段と激しくなる中、こうしてのんびりダラダラと書いていられる場所もやっぱり無いとなぁと感じています。読書メーターやtwitterのような気軽に記録や呟きを書ける媒体は大変ありがたいと身に沁みておりますけども!
とはいえ、現状がっつり書く機会が作れないので、どうしても活動はtwitter寄りになってしまうのですが、今後もまったり暫く続けていこうと思います。
さて昨年の振り返りですが、28冊読了でした。何か月も1冊も読んでいない時期もあったのか…。最近は電子書籍が大活躍中です。kindleでしか読んでないけれど、他にも良いサービスがあれば手を伸ばそうかな。
そして個人的マイベストはこちら。選んだ作品、すべて初読み作家さんだった!珍しい。
阿部智里『鳥に単は似合わない』 ⇒感想記事
昨年の夏にガツンと衝撃を与えた一冊でした。八咫烏の世界観や情景にすっかりのめりこみ、宮廷の姫君たちの競い合いは、酒見さんの『後宮小説』を読んでいるかのような贅沢な感覚に取り込まれていたので、中盤から終わりにかけての展開の転がり方に驚きました。そ、そう転がっていくのか…!少女小説読みさんには特に好きではないかな!とってもお気に入りです。続編は主従コンビが活躍するとのことなので、ぜひ読みます。(色々仕掛けがあるんだろうなぁ)
白川紺子『下鴨アンティーク アリスと紫式部』 ⇒感想記事
副題の組み合わせに惹かれて手に取った一冊でしたが、想像以上のストライクゾーンに入った! 文学作品の縁から人の想いを紐解く展開にほっこり。ほんのり糖分ものせていて、読んでいて幸せな気分になれました。
夏目翠『クリムゾン・ヴァンパイア』シリーズ(全3巻)
吸血鬼(異形)の現代ものって、どうも惹かれてしまう。このシリーズは最後まで、少し殺伐していて、人の掛け合いが生々しく描かれて、かつ糖分も徐々にしっかり撒かれていて大変おいしかったです。こういうの弱いんだよ!
古野まほろ『セーラー服と黙示録』 ⇒感想記事
女子高生を中心とした謎解きが中心の物語だけど、三人の女学生が自らの得意分野で真実を突き詰めていくのが面白かった!でも、謎解きが終わった後で出てきた「真実」の奥深さにぞっとさせられました。深淵の一部を垣間見てしまって、表紙の女学生に惹かれて買った時の何となく予想してた物語と違っていて、思いもよらない思想に触れました。続編が今月出るようなので、楽しみでしゃーないです!
初恋時 - クリムゾン・ヴァンパイア (C・NOVELSファンタジア)
※2016/1/16 追記…設定の不具合?で、当記事の管理者からのコメントが投稿エラーになってしまいます。。コメントのお返事ができず申し訳ありません。引き続き、確認を行っております。
]]>はじめて読む方の本だったけど、とっても好みの一冊だった! 三人の女学生が自らの得意分野で真実を突き詰めていくのが面白かったな。学園の深淵は、ほんの少ししか見れてないだけで、まだまだおぞましい事実が潜んでいるんだろうなぁ…。非常に特殊な世界で時々難解なところがあるものの、読みやすく何より続きが気になってぐいぐい読んでしまった。
青年神父とか、とある少女の背負うものとか、もう少し踏み込んだところを読んでみたかったな。
ところで、「聖アリスガワ女学校」とか「水村英生」とか、某シリーズ某著者をほうふつとさせる言葉が出てきて、かの人と何かしら縁のあるひとなのかなと思ったり。しかも由来がそれらしく記載されていて、にやけずにはいられなかったよね。。
]]>
若宮の寵愛を受けるためお家ぐるみで競う麗しき春夏秋冬の姫君たちの物語と思ったら!終盤にかけての展開が思いがけないもので、すっかり、すっかりやられました。
特筆すべきは八咫烏の世界観や情景描写!緻密な舞台なのに違和感なくするっと世界に入れました。『獣の奏者』読んだ時のような驚きだ…。最後まで読み終わると印象が変わりますが、月夜に舞い散る桜吹雪の場面がお気に入りでした。そして、登場するものたちの物語に魅力とおそろしさを抱きましたよ。特に中盤で明かされるとある姫の物語が切ない。(第三者から見ると結構薄気味悪い雰囲気出していたのに…)それにしても初見で抱いた印象が最後には大幅に変わるとは。。
中盤までは酒見さんの『後宮小説』を彷彿とさせる雰囲気で、これは少女小説読みさんは特に好きではないかなぁ。 ある姫が仮面を剥いだあたりが女の闘い&政の駆け引き最高潮だったー…。
続編も今作とは雰囲気が変わり主従たちが活躍すると聞いているので、ぜひ読みます!
まだ序章のうちに入るけど、これからが楽しみな一冊! 現代に人知れず共生している「吸血鬼」。主人公アリスは、事件捜査と彼女自身の体質―事件や現場に居合わせる確率がとても高い―によって、 彼らの領域へ踏み入れることになり・・・。新卒刑事アリスと吸血鬼の理一との関係が面白いです。現時点で糖度がほぼ無い状態から・・恋愛になるのか友情になるのかさえも未知数のため、どんな転がり方になるか楽しみです。
と、続編前提で考えてしまっているけど、出るよね・・・?
(同文庫でお気に入りの『下鴨アンティーク』が単発ものかと思ったら6月に続編が出るそうなので、これもシリーズもののひとつだと思いたい・・!)
二人の距離感がたまらん!かつて距離が近かった記憶を取り戻してほしいような、でも事件も思い出すことでもあり千景を傷つけてしまう恐れから思い出してほしくないと、矛盾した思いを抱いて悶々する透磨。千景の祖父との約束もあり美術品のように大切にしたいのに、人間らしい独占欲が出始めてきて動揺したりと、1巻でクールなヒーローと思っていた彼の姿が段々変化していて面白かったです。絵に込められた想いをなぞり、紐解く才があることで孤独を背負う宿命だと半ば諦めて受け入れている千景も、『異人館画廊』で集うメンバーたちと関わったことで他者との接し方に欲が出てきて、人形っぽさから人間らしさになってきた印象。(特に透磨との掛け合いが大きい!)そんな今の千景に透磨の元恋人と会う機会を作るとは(笑)
スローペースな恋愛面も段々と本領発揮になるのかな。楽しみのような、今の絵画をベースに恋愛はほんのり程度の現状も好きなので、、気になるところ。
様々な事件や衝突を経て、少しずつ、けれど着実に二人らしい主従関係を築きつつある花頴と衣更月。そこへ花頴の父と家令の鳳が帰ってきて、さらに二人の関係に変化をもたらしてゆきましたね。わりと強引に(笑) やはり前当主と前執事の主従を前にすると、花頴たちの主従関係はまだまだ発展途上ではありますが、それでも段々息が合ってきている二人を見ていると微笑ましいやら初期のちぐはぐさが恋しいやら。花頴の父を尊敬するあまり、花頴を自分の主として本当に受け止めていないのではと懊悩する衣更月の独白があり彼にとっては苦悩しているけれど、、傍から見れば無自覚なだけで立派に「花頴の為」に行動しているようにしか見えません。特に最後のエピソードとか!1巻の冷めた感情が嘘のような変貌ぶりです。花頴の行動も、衣更月への信頼と情が伺えて、ますますよくなってきたなぁこの二人。
ところで、前回の件があったから出番を懸念していた赤目さんですが普通に登場して、結構おいしい立ち位置をちゃっかり確保していました。さすがです、赤目さん。花頴の良き(厄介な)友人として、今後もちょっかいかけてくるのかなと思うと楽しみ。
]]>