『つれづれ、北野坂探偵舎 心理描写が足りてない』河野裕 [読書]
神戸北野坂の小さなカフェ「徒然珈琲」には、背を向け合って座る二人の男がいる。一人は作家、もう一人は元編集者の探偵だ。ある日、一人の女子校生が「死んだ親友の幽霊が探している本を見つけてほしい」と訪ねてきて…。シリーズ第1弾。
「サクラダリセット」シリーズの河野さん新作だ!
レーベルやジャンルが違っていて戸惑うも、透明感のある雰囲気が相変わらず素敵でした。舞い降りてきた謎を、まるで物語を紡ぐかのように推理していく手法は新鮮。作家が物語を作り、編集者が軌道を担当する。協力しながら謎を解決するのかと思えば、意見が分かれれば別行動に移ってしまう二人。一見仲が悪いようにも見えるけれど、互いを分かっているからこその行動も見えてきて…。探偵と助手という枠にとらわれない、気になるコンビが見つかりました。
作中の作家・朽木曰くストーリーテラーである彼はただ物語を作り上げる立場であると言っているので、本質的に本シリーズは推理ものではないのかもなー。あと、副題の「心理描写が足りてない」と書かれているも、ひとの内面を時に抉るように描いていたなと。 今回のゲストたちそれぞれが向ける感情がとても友情の一言では片付けられない複雑で、繊細なものだったのが印象に残った。 ともあれ、作家と編集者が囚われている過去が、今後どう関わってゆくのか…物語の締め括りが予想出来なくて気になります。2巻も楽しみです。
河野さんの本を読むと、ひどくセンチメタルな気分にさせられる。じんわり、沁み入る感じ。良いなぁこのひとの文章。
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