落ち着いて、あらためて。 [日々のことでも]
恩田陸さん、直木賞受賞おめでとうございます!!!
とても、思い入れの深い作家さんの一人なので、直木賞作家として評価されたことに、一ファン一読者として嬉しい限りです。(本の感想を書き出したい、思いを共有したいと思ってブログを立ち上げる要因の一つが恩田さんの作品だった)
高校一年生の夏に、『六番目の小夜子』に出会ってから大分経つんだなぁ。。
恩田さん、伊坂幸太郎さんを通して作家読みが始まって、それから色々なひとの作品を読むようになって。
おそらく感情が敏感で、刺激を受けやすい時期に出会ったこともあって、余計作品にのめり込んで、無心になって読みふけていた。エッセイのどこかで仰っていたように、現実から逃れさせてくれるような、強力な力を持った物語に飢えていたんだよなぁ。
あの頃を振り返ると、今はてんで、しっかり読めていない状況下ではあるけれど。(一日中本を読みふけったり、徹夜で読み終えたりすることがもう出来てない。。)
ああ、本を読むことってほんとうに幸せだと思える作品を、出会った年から今にかけても生み出し続けている恩田さんに、感謝しています。
受賞から一日経って、どの本屋さんに寄っても品切れ状態ににやけが止まらない。
おそらく世間的に一番広く知られている賞だろうから、著者を知らない人が手に取るきっかけにもなると思うと、あの本の魔力に囚われてしまうのか、すっごいんだぞーみたいな、ちょっとした先輩気分になって浮かれてるのかもしれない。
さて、もう個人的に恩田さんお祝いモードに入ったので、実はまだ読んでいなかった未読本2、3作ほどを今度こそは手に取ってみよう。
(Wikipediaで確認したら、もう著作が50冊を超えていた。こ、こんなに出していたのか…)
2016年マイベスト [感想まとめ]
2016年は65冊読了。
五感を使って楽しんだ読書が多い印象。改めて本を読む楽しさをかみしめるような年だった気がする。
以下、マイベストです。
恩田陸『蜜蜂と遠雷』
ここ数年の著作の中ではダントツにお気に入り。系統だと『チョコレートコスモス』を彷彿とするような、臨場感と興奮が味わえた。ピアノコンクールを舞台に挑む者たちの音の調べに魅了される。彼らが奏でる曲は正直知らないけれど、想像上で聞こえた気になる不思議さに、興奮と知らない体験からの恐怖がこった混ざった状態で読みふけた。冒頭から最後まで、興奮冷めず駆け抜けた一冊。
原田マハ『楽園のカンヴァス』
文字から情景を読み取り、想像を膨らませる。絵を知らなくても想像から楽しませて、ルソーの世界へどっぷり浸かれる一冊。新しい世界を知ることへの感動と歓び。感謝の気持ちで読了した。
小川一水『天冥の標1 メニー・メニー・シープ』
壮大なスペースオペラを、ついに手を出してしまった。面白すぎて興奮がしばらく冷めなかった一冊。おそらく各巻ごとに時代も舞台も主要人物たちが変わっていくようだけど、違う話のようでも実は色々と話は繋がっていて、巻が進むごとにその繋がりや、真相が分かってきて痺れる。1巻は壮大なSFの世界観を見せつけられ、2巻は地球上で発生したパンデミックもの、そして3巻は美少年が率いる宇宙戦闘もの!まだ3巻途中とはいえ、すっかりシリーズに魅了されている。どんな驚きや楽しみを見せてくれるだろう。
伊藤計測『ハーモニー』
犯罪や病気の無い調和された幸福な世界。蔓延っている負の要素を徹底的に排除した社会は、わたしという魂が存在しうる世界なのか。投げかけられた問いに、自分なりの答えを見つけては、また咀嚼して考えてこんでいく。もう著作が読めないは、本当に寂しい。
古野まほろ『ぐるりよざ殺人事件 セーラー服と機関銃』
独自の風習が構築された絶対的世界で突如起きた殺戮。迫りくる脅威に対し、少女たち持ち前の才能と機転をもって手口、動機、犯人像を畳みかけるように暴いていくラストには痺れた!
ちなみに今年初めて金田一耕助シリーズを読んだけど、かなり好みで、設定雰囲気展開が本シリーズは似ているなぁと。美少女、 閉鎖的な村、不気味な因習、おぞましい殺戮…。
パトリック・ジュースキント『香水 ある人殺しの物語』
文字を読んでいて匂いを感じ取る異常体験をした一冊。匂いたつ文章に眩暈がしそう。至高の匂いを求めて一心不乱に切り拓いていく男の一生が、その手段が不気味かつ鮮烈で、目が離せなかった。倫理に反した生き方を読んでいるのに、ブラックユーモアな雰囲気で面白く読んでしまった。
米原万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』
ロシア語通訳の著者がソビエト学校に通いプラハで過ごした少女時代と、旧友を訪ねて再びかの地に降り立った時の体験を綴ったエッセイ。少女の目を通してみた世界と、世情によって変わってしまった友人たちに向ける感情は何とも言えない。ふるさと―故郷とは何なのか。わたしが持つ考え、倫理観、思想はわたしだけの意思で決定されているのか。考える。
妹尾ゆふ子『翼の帰る処5・下』
祝・完結!何度も何度も繰り返し読んでは、ヤエトの視る世界に夢中になった。いつまでも読み続けたいシリーズだったので、完結は大変嬉しい反面、凄まじく寂しい。。。 神が人前で体現するファンタジー面にも興奮したけれど、人が息づいていると実感する何気ない日常(謀略やら戦闘やら物騒なことはあるものの、それをひっくるめて)がとてもいとおしく。最後まで楽しかった。
天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 小川 一水
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/09/30
- メディア: 文庫
『蜜蜂と遠雷』恩田陸 [読書]
国際ピアノコンクールを舞台に、挑戦者たちが己の限界を引き出し音楽を奏でる。かつて天才少女とうたわれたが、あることを境にピアノが弾けなくなった少女。優勝候補筆頭と噂される完璧な美青年。音大出身だが今はサラリーマンとして勤めている男性。そして、養蜂家の父とともに各地を転々とし、ピアノを持たない不思議な少年。第一次から第三次そして本選にかけて、彼らの音の調べが繰り広げられる。
心揺さぶられ、また心ゆくまでこの物語を味わった。
本を読むことの歓びってこうだった。時間を忘れて、物語にのめり込み世界に浸る感覚。読み終えたときに、現実に戻ってくる眩暈のような感覚。 ただひたすら、夢中になれることの多幸感を思い出した。
挑戦者たちが生み出す音の調べは、曲を知らずとも映像で視えるような錯覚に陥って、興奮と同時に恐怖を抱かせる時間でした。初めて受ける衝撃は、快感と嫌悪を引き起こす。まさに挑戦者たちを評する側のキャラクタが抱いた感情を読者にも体感させる一冊だったのではないかなと。
文字を読んでいる状態で、視覚と聴覚も使われる錯覚に、興奮と同時に恐ろしさを感じてしまった。
曲目はほとんど知らなかったけれど、だからこそ、描かれる情景に自然と想像が膨らみ、圧倒され、より世界に引き込まれる。魔力だ、この本は・・・。濃密な時間でした。最後まで興奮が駆け抜けた一冊、本当に楽しかった。
『香水 ある人殺しの物語』パトリックジュースキント [読書]
十八世紀フランス。特異な嗅覚の才を受けた香水の魔術師が、至上の香りを求めて次々と殺人を犯していき…。
匂い立つ文章に目眩がしそう。文字を読んでいるのに、同時に匂いを嗅いだような錯覚にも陥って、酔う・・・。
至高の匂いを求めて一心不乱に切り拓いていく男の一生が、その手段が不気味かつ鮮烈で、目が離せなかった。明らかに倫理に反した生き方を読んでいるのに、ブラックユーモアな雰囲気で面白く読んでしまう。 理解できない視点で進む物語は薄気味悪さが終始纏わりついているものの、でも気になって読み進めてしまいました。。
読み終えたあと自分の感情になかなか整理がつけられず。最初から奇天烈な物語も、香りを嗅いでる不可解さも、極めつけのラストが凄まじいのにサラッと描かれたことにも、読み終えてから色々と衝撃が遅れて来ているのかもしれないな。たぶん。
文字を読んでいるはずなのに、匂いを感じ取ってしまう、そんな錯覚をせずにはいられない気味の悪さ(料理ではない、普段意図せず嗅いでいる匂いを感じ取ってしまう)。匂いを発している本。不思議で、不気味だからこそ印象に残る読書体験だったなー。
『ハーモニー』伊藤計劃 [読書]
<大災禍>により破壊された世界が、新たに構築した社会は、全ての人間が等しく平等に、傷つけられることがない絶対的な安定した世界だった。世界に鬱屈した思いを抱えていた少女トァンは、謎めいた少女ミァハと出会い―。
ハーモニー。犯罪や病気の無い調和された幸福な世界。蔓延っている負の要素を徹底的に排除した社会は、わたしという魂が存在しうる世界なのか。考え込んでしまう一冊…。
全体的に、物語を構成する世界の在り方や、構築するまでに至った人の感情の発想が面白かったけれど、物語の主軸であるトァン・ミァハ・キアンの三人少女が居たからこそ、のめりこんで読みふけたのかな。
トァンが辿り着いた真理を、物語最後の会話を、頭の中で繰り返し咀嚼していく。 トァンに向けたミァハの言葉を反芻しながら、彼女の意思を、感情を思いはせる。
『虐殺器官』『ハーモニー』を読んだ今だからこそ、改めて、次の物語を読みたかった。殺戮の世界、調和のとれた世界を描いて、その次の世界はどのような光景が映っていたのだろう。本当に、残念だけれど、この本を読めて本当に良かった。
『天冥の標1 メニー・メニー・シープ 上・下』小川一水 [読書]
西暦2803年、地球からの植民星メニー・メニー・シープは入植300周年を迎えようとしていた。しかし土地を統治する臨時総督のユレイン三世は、地中深くに眠る植民船シェパード号の発電炉不調を理由に、植民地全域に配電制限などの弾圧を加えつつあった。セナーセー市の医師カドムは、《海の一統》のアクリラから緊急の要請を受ける。街に謎の疫病が蔓延しているというのだが……。シリーズ第1弾。
なんだこの面白いやつはー!と内心叫びつつも、とんでもない虚脱感に襲われて読了。お、お、面白かった…。
個人的に話が濃密そうなファンタジー・SF系の長編作品はここ無意識に最近避けていた節があったので、久しぶりに手に取りました。
第1巻は世界観の説明面が強いものの、植民星に住む人や種族、そして勢力図が濃い! 出そろった人々たちが、様々な思惑や激情を孕みつつも非情な弾圧を加えている統治者に向けて戦う…話かと思ってたのに、下巻の最後で、全ての予想が(良い意味で)裏切られてしまった。こんなに出尽くして、盛り上がりきって…その後にどう話が続くんだ…?
かつて六つの勢力―【医師団】【宇宙軍】【恋人】【亡霊】【石工】【議会】それぞれの話を読んでみたいな。人体に電気を体内に取り込み海中でも呼吸できる《海の一統》たちの話とか(アクリラの風貌が、宇宙がテーマということもあって、某茅田作品に出る金髪の天使を彷彿とさせました)、個人的に石工(メイスン)たちの動向が、上下巻通してとても面白かった。古からの契約により人に支配され、考えることすら放棄してしまった種族たちの自己の尊厳の復活に至るまでの話が、熱い。
あと、小川さんの物語を読むのは本作が初めてだけど、こうも恋愛面のフラグがぼっこぼこに立ち上がってて驚いた。そして心構え持たせる間もなく絶望に叩き落すんですね…。文章も読む前からもっと硬い雰囲気かと思っていたので、随分読みやすかったなー。
今後、どんな風に話を持っていくのか非常に気になる!!!
天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 小川 一水
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/09/30
- メディア: 文庫
天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 小川 一水
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/09/30
- メディア: 文庫
『かくりよの宿飯 三 あやかしお宿に好敵手きました。』友麻碧 [ライトノベル]
妖が見える女子大生・葵は、ある日祖父の借金のかたに妖の世界「かくりよ」に攫われ、宿屋を営む【天神屋】の大旦那から鬼の嫁入りを迫られる。料理の腕を武器に、自ら天神屋で働き借金を返そうとするが妖たちは彼女に冷淡で…。
とんだ飯テロ&異形もののシリーズだよ! 読むと何か物を入れたいような、口寂しい気分になる。
妖と引き立つお料理の描写には、つい「妖怪アパート」を思い出してしまうけれど、主人公は女子大生かつ妖たちの棲む異世界で孤立奮闘するところから始まるので、また違った面白さがありました。味方のいない頃から着実に居場所を作っていく強かな姿とお人よしな性格、そして巻を増すごとにお料理の描写がたまらなくクセになる。
彼女のお料理に対する姿勢の背景に隠れた過去―小さいころに助けてくれた白い妖の謎や、大旦那様との糖分(こちらは結構、長期戦の気配が…)など気になる要素があるなか、今回の3巻は気になる終わりであーっっ続きが待ち遠しくって仕方ない。。過去2巻は一巻ずつ話がまとまっていて最後にはほっこり幸せな気分に浸れたので、まさかの緊張感引きでした。いよいよ白い妖について核心に触れるのか。大旦那様との恋路(になるのか…)の進みも、天神屋のメンバーとの掛け合いも、、気になる!!
かくりよの宿飯 三 あやかしお宿に好敵手きました。 (富士見L文庫)
- 作者: 友麻碧
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/富士見書房
- 発売日: 2016/02/10
- メディア: 文庫