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『黒猫の薔薇あるいは時間飛行』森晶麿 [読書]

黒猫の薔薇あるいは時間飛行

黒猫の薔薇あるいは時間飛行

  • 作者: 森 晶麿
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/12/07
  • メディア: 単行本

”「ねえ、恋って成就しないと終わっちゃうものなのかな?」” 黒猫の渡仏から半年。付き人はポオをテーマとした博士論文に取りかかるも、つい黒猫のことを考えてしまう。そんな時、作家・綿谷埜枝のある小説の構造に「アッシャー家の崩壊」の構造を見出だす。彼女からは、その小説を研究するには一晩で消えた薔薇の謎を解く必要があると言われ…。シリーズ第3弾。

シリーズ中で一番好き。とても、美しい。

黒猫と付き人の関係が好きで読み進めていたシリーズだったけど、3巻はひとつの物語としてすごく面白かった! ミステリと美学と恋愛をたっぷり活かしてあって満ーたーさーれーたーよー…。 黒猫と付き人にそれぞれ降りかかる謎が次第に重なっていく展開や、真実…を推し量る程度に留めて少し想像を膨らませられる謎の顛末が素敵でした。 空中庭園や薔薇のくだり等、想像するのも楽しかった。 お気に入りは、万葉集を恋愛と絡める部分で、文学的な考察を取り入れているのがこのシリーズらしいなと感じる。<道の辺の尾花が下の思い草今更々に何か思はむ>が、まさに今回の恋愛部分を指しているのではないでしょうか。
そして、余韻に浸れるラスト。このシリーズ読んでてよかったなー。こんな余韻に浸れるような本を読めて幸せ。

黒猫の渡仏により、一時離れ離れになってしまった事に残念な気持ちを抱くも、今回は離れたことで付き人が一人の推理者として成長していて新鮮で面白かったナ。 あと、それぞれにライバル出現? と言っても、どちらもライバルとしてはまだまだ物足りない感じ。シードルの辺りは、もう誰にも立ち寄らせない雰囲気が…。アバターのやり取りも、可愛いなぁこの二人と思いながら読んでた。というか、黒猫の余裕っぷりは何なんだ、一体! 付き人も頑張ってるけど悔しい気持ちになってしまう(笑) 無邪気さと切なさと、ほんのりとした甘みにやみつきになる。


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『黒猫の接吻あるいは最終講義』森晶麿 [読書]

黒猫の接吻あるいは最終講義

黒猫の接吻あるいは最終講義

  • 作者: 森 晶麿
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/05/24
  • メディア: 単行本

”なんでわからないんだろう。 あの瞬間に聞けなかったことが、すべてだったんだよ。”黒猫と付き人がバレエ『ジゼル』を鑑賞中、ハプニングが発生する。5年前にも同じ舞台、同じ演目でバレリーナが死亡する事故が発生していた。2つの事件の関連を気にする付き人だが、黒猫はいつもと違い話しに乗ってこない。仕方なく付き人は一人で事件解決に乗り出すが…。シリーズ第2巻。

ウワー!なんなんだ黒猫と付き人の二人は!! 床ローリング状態。

黒猫が探偵役で付き人が助手役という構図が一転、今回は付き人ちゃん一人が事件解決のため奮闘してました。黒猫の元恋人とされるバレリーナが渦中の人となると、余計に一人で頑張ろうとする付き人。そして、黒猫とのすれ違いもあって悶々状態。居心地の良い二人の距離感は、今回ばかりは色々と危うくもあってやきもきさせられました。ちらっと糖分も含めつつ基本的には淡泊めいた関係と見てたので驚いたなー。そして、黒猫の仕掛けが…に、ニクい。

相変わらず美学理論についてはついていけない部分はあるものの、前巻より楽しく読めた箇所もあり。「優美」についての見解は面白かったな―。しかし、美学を殺人と絡めるには、どうも浮世離れしたような曖昧な感覚に陥るなぁ。ポオの『黒猫』の犯人のように、事件を企てた人の心情を遠くに感じてしまった。

サテ、黒猫の付き人という関係も解消されてしまうし、物理的に二人の距離が遠くなってしまった今巻。 何もかも不確かなままだけれど確実に充足感はある二人の関係。次も気になります。  「厄介な男」といい「ばきゅーん」といい…黒猫にキュンキュンさせられてしまって、どうしたらいいのか。 


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『黒猫の遊歩あるいは美学講義』森晶麿 [読書]

黒猫の遊歩あるいは美学講義 (ハヤカワ文庫JA)

黒猫の遊歩あるいは美学講義 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 森 晶麿
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/09/05
  • メディア: 文庫

若き大学教授、通称「黒猫」とその付き人は、様々な事件を美学理論を通じて真実を解き明かしていく。第1回アガサ・クリスティー賞受賞作。

キャラの掛け合いが好ーきーだー!!

美学理論という観点を用いて謎解きをしていく話というのは新鮮な切り口で興味深かったものの、私には今ひとつピンと来ず響かないまま終わってしまってた…。仕掛ける謎が、少し自分には都合が良すぎるように感じられてしまって乗りきれなかったのかもしれない。面白く感じるけど、好みではなかったかな。

がしかし!主役二人の関係性はたまらないものがありましたよ!ものすごく、好みだった。齢24にして大学教授へとなった通称「黒猫」青年と、少々厄介な彼の手綱を締める役として選ばれた付き人のヒロインちゃんが!! 恋愛未満だけれど、互いに意識してるのではと大いに勘ぐれる描写が散りばめられていてニヤける。しかも、ヒロイン→黒猫よりも、黒猫→ヒロインのベクトルの方が強い気がするのは気のせいだろうか…。ヒロインにはイマイチ伝わっていないけれど、読者から見れば分かりやすい黒猫の行動。たまらん。。本作風に二人の気になる点を整理してみれば、

● 黒猫宅にて、ヒロインが一緒に夕飯を共にすることが日課となっているのは何故か。
● ヒロインの肩を借りて寝る黒猫の姿(×2回)が馴染んでいることと、ヒロインも普通に受け入れている様子なのは何故か。
● 黒猫はヒロイン以外の人の匂いも嗅ぎ分け出来るのか
● テレイドスコープに関する黒猫の発言は、どう受け取ればいいのか

…書けば書くほど確信を抱くな! ちなみに、お気に入りの場面は喫茶店でパフェを食べるところです。微妙なジレジレ具合を見せるものの、何だか見てると落ち着く二人の関係。今後がとてーも気になります。

ところで、本作を読むにあたってポオの『黒猫』を読んでみた。これ、怪奇(恐怖?)小説だったのか…。ミステリだと思って読み始めたので心構えが出来ていなかった。怖かった…。人間の精神が崩壊していく様と、全ての業があのような形で帰ってくる様が怖かった。読んだあとに本作を読むと、「壁」についての議論及び推理が面白かったなー。


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『ガソリン生活』伊坂幸太郎 [読書]

ガソリン生活

ガソリン生活

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2013/03/07
  • メディア: 単行本

望月家の兄弟は、偶然女優の翠を車に乗せることに。その翌日、彼女は交通事故で亡くなるが、その事故は不可解なもので…?物語の語り手は、望月家の愛車・デミオ。デミオから見た人間たちの刺激的な日常を描く。

楽しかった―! 車たちがおしゃべり好きで、人間たちに興味心身な様子が和むなぁ。

子供らしからぬ冷静さで家族をまとめてる小学生の次男坊を中心に、少し鈍感で優しい長男に、気が強いけど厄介事に巻き込まれた高校生長女、そして3人兄弟の母親で構成されている望月家はまた面白い家族だなー。特に長男と次男の凸凹しているようで、妙にしっくりする立ち位置が気に入ってしまった。 途中から出番が増える玉田記者と次男の亨のコンビもしっくりはまっていて面白かった。でも、安田のおばさんが個人的には、印象が強烈だったかな!

いろいろ散りばめられた要素が、絡まって交差して、やがては全てこぼさず収束していく様は、いつ読んだって恍惚してしまう。物騒な事もあったけれど、楽しい雰囲気で占めていて(きっと車視点が大きい!)。そして寂しさを予感させる独白を聞いてるとちょっとしんみりしたり。だからこそ最後のやり取りは、ついじんわりとしてしてしまった。

『オー!ファーザー』の彼らがひょっこり顔を出してたな。こういう、思わぬ再会にニヤリとできるのが楽しくて、伊坂作品はしっかり刊行順に読まなきゃなって思う。 

全然話は違うけど、『ガソリン生活』ってタイトルを見て急に魔夜峰央のパタリロ!のパロディマンガで、ガソリンスタンド?の油をすするパタリロ似の妖怪を思い出してしまった。。 


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『残り全部バケーション』伊坂幸太郎 [読書]

残り全部バケーション

残り全部バケーション

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/12/05
  • メディア: 単行本

夫の浮気が原因で離婚する3人家族は一人の青年・岡田から声をかけられる。「家族解散の思い出」として、岡田とドライブすることになるが―?

話を跨いで繋がっていく人間関係が痛快! 連作小説って、独立した話をそれぞれ楽しめるし、それでいて同じ登場人物が顔を見せて活躍したり話の話題になったりするから楽しいなぁとしみじみ。1,2話を緩やかに読んでいたら段々面白さが加速していき、今までの要素をまとめた最後のシーンは痺れた。

1話目でいきなりコンビ解消した溝口・岡田の二人が、時を遡ったり1話目よりも先の時間が舞台の話で奇妙な縁で繋がっていてオモシロかったなー。1話の溝口は印象酷かったけどね!最後まで読んでも、その印象のままではあったけど、でも人が良い部分も知ってしまって、何だか憎めないキャラ。

『バイバイ、ブラックバード』を思い出すラストには「こうなってほしい」先の事を願いつつも、バイバイ~の時よりも現実的な考えできっと、焼肉屋からだろうなぁと思ってしまう温度差。 でも、きっと彼は今後の作品にひょっこり顔を出しそうな、そんな期待を寄せてしまってます。

「子供作るより友達作るほうがはるかに難しい」って言葉、オトナたちには刺さるんじゃないだろか。学生時代は何だかんだで強制的にでも友達作れる環境が整っているしね。


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『チャリング・クロス街84番地 書物を愛する人のための本』ヘレーン・ハンフ [読書]

チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本 (中公文庫)

チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本 (中公文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1984/10/10
  • メディア: 文庫

ニューヨークに住む本好きの女性が、ロンドンのチャリング・クロス街84番地にある古書店マーク社にあてた一通の手紙。二十年に渡って続く手紙のやり取りが収まった一冊。

本好き(特に古書好き?)にはたまらない一冊でした!

アメリカ人女性ヘレーンとイギリスの古書店員たちの手紙の交流のみで構成されている本書。 ヘレーンが欲する本の在庫についてが主だったのが、段々と交流が深まるにつれ色んな人たちがヘレーンに向けて手紙をしたためていきます。手紙のやり取りで特にお気に入りだったのは、やはり最初にヘレーンの手紙を受け取ったとある古書店員ですね。明るく、時に鋭いユーモアを混ぜたヘレーンの文章と、誠実に紳士に時に真面目すぎるのではと思うほどの謙虚な古書店員の文章は雰囲気が全く違っていて面白かったです。

登場人物たちが次々と挙げていく作品はどれも有名みたいだけど、私には数冊しか分からなかったのがちょっと残念。もっと知っていれば、より楽しめたのではないかと。 


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『皆川博子コレクション1 ライダーは闇に消えた』皆川博子 [読書]

皆川博子コレクション1ライダーは闇に消えた

皆川博子コレクション1ライダーは闇に消えた

  • 作者: 皆川 博子
  • 出版社/メーカー: 出版芸術社
  • 発売日: 2013/03/08
  • メディア: 単行本

モトロスに熱狂する若者たちが、ある事件を境に次々と不可解な死を迎える。モトロスに取り憑かれた彼らの行く末は―(「ライダーは闇に消えた」)。他、収録作全て文庫未収録作のみ集めた比類なき豪華傑作選第1弾。

デビュー頃は青春ものをよく書いてたんだなー、ちょっと新鮮な気持ちで読んだ。

ほのかな耽美な気配と幻のような現のような狭間の世界を描いている皆川さんの物語には、うっとりするなぁ。デビュー時からのめり込むような世界を書かれているんだな。 

表題作「ライダーは闇に消えた」はいくつか書かれている青春もののひとつで、お気に入りです。刹那的な激情と恋の駆け引き、そして友情…と青春面も楽しく読んだ一方で、友人の死を切っ掛けに次々と明かされていく人の繋がりとその因縁に厄介さに言葉にできないやるせなさを感じたり。面白かった。他では、姉妹であったり姉弟であったり…血の繋がったきょうだいたちの話が印象に残りました。 (「夜の深い淵」「ガラスの柩」)個人的に好きなのは「私のいとしい鷹」物静かな女性が奥底に孕んでいる熱が表面に浮かび上がってきたラストに痺れた。

次も読もう!


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『黄泉津比良坂、血祭りの館 探偵・朱雀十五の事件簿3』藤木稟 [読書]

黄泉津比良坂、血祭りの館  探偵・朱雀十五の事件簿3 (角川ホラー文庫)

黄泉津比良坂、血祭りの館 探偵・朱雀十五の事件簿3 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/08/24
  • メディア: 文庫

五百年の歴史を持つ名家・天主家。彼らは、山奥の閉ざされた館で血族婚を繰り返し行い、次第に狂気に蝕まれていく。銘酒少年時代の朱雀を描く、シリーズ第3弾。

表紙が一枚絵の片方っぽかったのでもしやと思ったけど、やっぱり解決編は次に持ち越しか!

このシリーズは本当に…残忍な描写をふんだんに魅せているよなぁ。。あまりにも現実とかけ離れた景色は、いっそ耽美的にも見えてくる。今回、館で次々と一族の誰かが斃れていくけれど、どれも想像するのもおぞましい描写でウッとなった。動機がどうとかではなく、犯人の精神面が気になるよ。。この人かなと思った人も結局退場してしまったので、次巻の真相解明が―呪われた一族の真実を早く知りたいです。あと薀蓄が面白かったです。系統が似ているからか、百鬼夜行シリーズを思い出したり。特に国歌の部分が興味深かった。 

ところで、少年朱雀は正体を曖昧なように描かれていたけれど、バレバレだったよ(笑) 前巻の青年朱雀の傲岸不遜な態度はまだ見えず、けれど所々隠しきれていなくて猫かぶりさがおかしい。特に探偵が絡むと面白かったなー、いかにも面倒そうな気配を醸し出していて。 どうやら次巻の舞台は青年朱雀に戻るようなので少年時代はこれきりのよう。少年時代の方が少し活発的かも?でも、大人になった朱雀の活躍も楽しみだな!(そういえば前巻までの、助手のような立場にいた柏木くんは今回はおあずけかしら。。)


タグ:藤木稟
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『私と踊って』恩田陸 [読書]

私と踊って

私と踊って

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/12/21
  • メディア: 単行本

休憩から中々帰ってこない同僚は、居なくなる前に不可解な言葉を残していた。言葉を辿るうちに重大な”可能性"を目の当たりにし―(「心変わり」)。あらゆる要素で詰まった、全19編の万華鏡。

あえてなのかなぁ。じっとりと後を引くような話が散りばめられていた。

恩田さんのノンシリーズ短編集は『朝日のようにさわやかに』以来の5年ぶりとのこと。実に様々な世界を魅せてくれました。なんてことのない日常の風景が、段々と変容していく不気味さを醸しだす「心変わり」や、その対となる「思い違い」、手紙の主を知った時と今後の不穏さを予感させる「忠告」、白昼夢のような現実の世界に酔った「二人でお茶を」などなど、好きなお話あったなー。

毎度短編集を読んでは思うけど、もっとこの話を中編や長編でがっつり読んでみたいと思うものもちらほら。そういえば、今年読んだ長編新作『夜の底は柔らかな幻』はここ数年の個人的ヒットでした。どちらかといえば恩田さんの本は長編が好きです。もしかしたら今後の長編の要素が、この短編集のなかに隠れているかも…と想像しつつ面白く読んだ。

 


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『お面屋たまよし』石川宏千花 [読書]

お面屋たまよし (YA!ENTERTAINMENT)

お面屋たまよし (YA!ENTERTAINMENT)

  • 作者: 石川 宏千花
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/10/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

縁日などで見かける面は表の屋号で出すもの。そして、自らのなりたい人間に姿かたちを変えられる妖面は裏の屋号で出すもの。しかし、面を付ける代償は大きく、場合によっては人として生きることがかなわなくなり…。危険なものと知りつつも人々は面を求めお面屋を訪れる。シリーズ第1弾。

表と裏。光と闇。どちらの世界も知ってなお、少年たちは面を売り、旅を続ける。

好きだな! 妖面や天狗が登場する本作は時代ファンタジーの雰囲気を感じる。そして、主役の太良と甘楽の役割や立ち位置がとても気になった。石川さんの本は『ユリエルとグレン』以来だけど、ユリエル~は本物の兄弟が主人公で、本作は血は繋がっていないけれどまるで兄弟のような二人が主人公。

赤子の時に天狗の棲む山に捨てられた二人は、面作師の修行のもと面を売って全国を渡り歩いている。彼らのもとへ妖面を買いに訪れる人々の物語は、人の想いの移ろいがとても切なく、最後は余韻に浸ってしまう。安易な幸せをかかないところが好き。特に「枯れない花」がお気に入りです。年頃の少女なら誰もが抱えているであろう感情が妖面を付けたことで変わっていく様が。

そして太良と甘楽。表・裏の面を売るだけでなくとある重い役割も担っている二人は、それでも面作師として生きていくと決めている。そんな彼らを見守る姿…天狗たちの存在感が、わりと大きい(笑)。とても過保護になってますよ、みなさん!血の繋がりは無いけれど、太平と甘楽、育て親に天狗たちの間には家族といえるあたたかい繋がりを感じ取れてほっこりする。特に太平と甘楽は「あんじゃ」のやり取りが、にやりとする一方で少し背伸びをしている感じで、少しグッときたり。

続刊もあるようなので手にとってみよ。1話で登場した迅雷の小天狗坊にもまた会いたいな!


タグ:石川宏千花
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