『首の姫と首なし騎士 英雄たちの祝宴』睦月けい [└ビーンズ文庫]
”知らなかった。真正面から向き合ってくれる人の教えに応えられないことが、こんなにも申し訳なくて情けない気持ちにさせられるものだとは。”フォルモント国に豊穣祭の季節が訪れる。国王の末っ子姫シャーロットは祝宴に参加するため、教育係リオンの鬼レッスンの真っ最中。何とか祝祭の日を迎えるが、彼女を待っていたのは王宮に蠢く陰謀で…。シリーズ第3弾。
ロマンス成分控えめな王宮サスペンスな印象。
シリーズ中いちばん好きだな! シャーロットや騎士が着飾り、宮廷の陰謀へと突入するという視覚的にも華やかで今までの雰囲気とは少し違った感じを受けて楽しかった。 そういえば、最近出会うシリーズいつも3作目で陥落されているような気がするけれど、何だろうな・・。
内気な少女が自分のトラウマと向き合いつつも、頑張って前向こうと奮闘する姿はつい応援したくなる。そして、さりげなく彼女の背中を支えられる存在である騎士アルベルトとのあたたかな関係も今回はシリーズ比で見せ場が多くて、微笑ましかったり転がりそうになるくらい身悶えしたり。「アルベルトへの処罰」の場面は、それはもう叫んだ。あまり甘みがないと思って読んでいると、時々罠に引っかかかって心臓がドキマギさせられる。 今回で少し明かされたアルベルトの過去が今後どのようにシャーロットに作用してくるのかな。
あと、個人的に気になっている求婚者セシルの動向が掴みきれない。エルマー家の傀儡と徹底しているものかと思えば、時折感情の片鱗を見せたりで。 敵方の位置にいるであろう、彼の意思が変化していくのか。その辺りも今後気になる。
うーん。たぶん、このシリーズが控えめな甘さだなって思うのはヒロイン視点なわけで、視点を変えれば糖度も変わる気がする。人の感情の機微に敏感な彼女とはいえ、そういう感情には疎いようだし。それでも、彼女に向ける仕草や感情の形がわざとシャーロットにはわからないようにしている辺りが、なんだかこうこそばゆいというかニヤニヤしてまうんですよ! シャーロット視点だからこそ落ち着いた雰囲気も出せていて、そこが好きなわけなので。引き続き、控えめラブ(までいってないが)を楽しもう。
頭の天辺に、ぽんと温かい重さが乗った。 振り返った肩越しに、 静かな漆黒の眼差し。
撫でるわけでもなく、声をかけるわけでもない。なのに不思議と肩の力がぬけていく。
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