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服部まゆみ 『この闇と光』 [読書]

この闇と光 (角川文庫)

この闇と光 (角川文庫)

  • 作者: 服部 まゆみ
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2001/08
  • メディア: 文庫

失脚した父王とともに、小さな別荘に幽閉されている盲目の姫君・レイア。優しい父と侍女のダフネ、そして父が語り聞かせて くれる美しい物語だけが、レイアの世界の全てだった。シルクのドレスや季節ごとの花々に囲まれた、満ち足りた毎日。しかしレイアが成長するにつれて、完璧だったはずの世界が少しずつ歪んでゆく―。

やられた。 読了後はしばらく茫然としてた。
物語は前半部分を闇、後半を対の光として書かれていましたが、そのコントラストの激しさに戦慄しました。 主人公のレイアは盲目の姫君。優し父王、そして意地悪で怖い侍女のダフネしか彼女の周りには人がおらず、幽閉の身でありながらも父から与えられる知を吸収し成長していきます。 この前半の甘く閉鎖的な世界にうっとりしていたら、後半の怒涛の展開に驚くばかり。 彼女の世界の崩壊、そして強引に明かされる「真実」―。

些細な違和感の正体がこれか!と思いはしたものの、トリックの全ては看破できず凄いと唸るばかり。 ミステリを軸に読むのであれば、少し物足りないかもしれませんが、この本は物語…うーん、著者が描く耽美的な世界を楽しむために読んだ方が良い気がするな。
色々語りたいけれど思い切りネタバレになってしまうので自重。 どんでん返し 好き(?)には持ってこい。 あとは前半部分は色々と楽しめる要素がありました。ものの見方が変わるといいますか。 芸術面に詳しかったらもっと楽しめたかも。

量で言えば中編の位置だと思います。それに読み易い。なのに、その内容は濃厚でやみつきになります。

今作はすでに絶版状態で古本屋で探すしかなかったのですが中々置いてある場所が見つからず、ずっと探していました(地元図書館には置いてあったのだけど、やっぱり欲しくて^^;)。 これほど手元に置いて何度も繰り返し読みたくなる本だとは思わなかったので…某大型古本屋チェーン店に感謝。 そしてこの本を読むきっかけでした読書メーター仲間兼twitterでもお世話になっているtomo*tinさん、華酉さん、浩さん、ありがとうございました。
今年のベスト本のうち一冊には確実に入るくらい、大好きだよ!!

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タグ:服部まゆみ
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コメント 4

リュカ

凄く私好みな雰囲気です^^
読みい~!私も古本屋巡りしてみます♪
見つからなければここから密林へgoですね^^q
by リュカ (2010-12-28 21:25) 

ミナモ

>リュカさん 
ぜひとも♪お手に取ってみてください^^*
なかなか入手困難ですが、密林マーケットプライスはまだ大丈夫なので☆ミ(笑)
by ミナモ (2010-12-29 10:27) 

sherry

ミナモさ~ん、これ、とんでもなく面白かったですっ!!!

面白くてもったいないから少しずつ・・・なんて余裕無し。
昨日一日で一気読みでした!
まさかこんな結末が待ってるとは、思わなかった~。

いつもは「罪はちゃんと償う方がいい」と思ってる私ですが、
この本はこのラストの余韻がすごく良いです。
光と闇、善と悪、愛と憎は対角にありながら、実は表裏隣り合わせにあって
簡単にすり替わってしまうものなのね・・・。
どちらが光でどちらが闇かなんて、その人の主観で変わってしまうものだから・・・。
「私がソーニャだったら、自首など勧めないわ」
私もこの結末で満足です。

ミナモさんは「デミアン」や「嵐が丘」「罪と罰」は既読ですか?
私は未読なんですよね~。読んでみようかなぁ~。

ところで、私は図書館で単行本を借りて読んだのですが、文庫の
解説はどうでしたか?
この本、入手したいと思うのですが、単行本にするか、文庫本にするか
ちょっと迷います~。文庫の解説も読みたいなぁ~。

そして俄然興味の湧いた服部まゆみさんですが、もう亡くなって
るんですね。しかも9冊しか出版されていない?
「一八八八切り裂きジャック」も面白いですか?
感想、楽しみにしています。
面白い本を紹介してくれて、ありがとう^^
by sherry (2011-01-10 16:07) 

ミナモ

>sherryさん 
気に入っていただけたようで嬉しいですっ。やったー布教成功~♪←

ラスト、モラルで考えれば認めてはならないかもしれないけれど、私はとても心地よい気分で読み終わりましたw  きっと主観の問題なんでしょうね。だから、枠にはまらない終わりが好きです。 余韻も…二人の今後を考えてニヤニヤしたりで、たまらんです!←

しかもこの本は色んな本を読みたくなりますよね! しかも文学的な小説…。私のその3作は未読です。 レイアの好奇心・探究心にくすぐられて、それらを読みたくなりますよっ。
レイアが学んだこと、経験したことは、本を通して私に色々と諭してくれたりしてます。

文庫の解説はね…これほど的確に分析してくれるとは!と思いましたw むしろ、この解説で初めて理解したところもあるし、手に入れて損はないかなと思います!(きっと・・・) 絶版なのが残念ですが、アマゾンマーケットプライスにはありますから!←

そうなの~もう、めっちゃハマったから全部読んでやろうって意気込んでたんだけど、服部さん亡くなってるそうで作品数もあまり出てませんよね。
でも、今ちまちまと読み進めてる一八八八~は、この闇~とはまた一風変わったテイストで面白いですよっ。 こちらは最初~中盤さえ越えれば一気に読んでしまうかも♪ 何より、超美形青年とマジメな青年のコンビがとっても好きだよ~ノシ

by ミナモ (2011-01-11 20:33) 

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