『死神の浮力』伊坂幸太郎 [読書]
幼い娘を喪った山野辺は復讐の時を伺っていた。無罪判決を受け社会に戻ってきた犯人に復讐を遂げるため、いざ妻と行動を起こそうとした矢先、奇妙な男が家に訪ねてくる。千葉と名乗る男は、行方不明中の犯人の居場所を知っていると言うのだが…。
死神の千葉が帰ってきた!相変わらず、飄々とした佇まいとひとと噛み合わない言動が楽しくて、好きだなぁ千葉さん。
若い夫婦が大切なものを壊した犯人に復讐を遂げようと闘うも、敵の狡猾な策略に屈服させられそうに。そこで千葉が登場することで予定調和で運ばれたかもしれない展開が所々崩れ始めていくのが痛快でたまらない。どこか人とズレた感覚を持ち行動する姿は時に苛立つこともあるけれど、そんなところも含めて面白い死神だなー。
犯人と対峙するなかで山野辺は「死」について終始考えている。父親と遊園地のくだりで気付かなかった視点が見えた時は思わずぐっときてしまった。 死の捉え方って年をとるごとに変わっていくような気がするけれど、自分は今後どう捉えていくのだろうか。
物語が始まるきっかけや対峙する犯人の人物像でひどく心を重たくしたけれど、読み終えた時は気分が浮上できた。千葉が関わるひとたちの物語をまたいつか読みたいな。
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