『世界螺旋 ―佐能探偵事務所の業務日記―』梨沙 [読書]
所長は眼帯+特殊な能力を持った高校生・戒、そして彼の兄が社長を務めるたったふたりきりの「佐能探偵事務所」。父の浮気調査を頼んで以来、事務所に出入りするようになった美姫は、最近戒の様子がおかしいことに気がつく。
表紙の少年(=戒)を中心にした推理ものかと思ったら、女の子が少年を救うために世界を変えようと駆けるSFものだった。表紙だけの先入観で読み始めたから、まったく違う展開が待っていて驚いた。著作のなかでは少し毛色が違う作品のよう。
人も物も関係なく結果的にどの世界も同じ結果を迎えてしまう”質量が均一な世界”という事実は、考えてみれば何だか空恐ろしい気分になるし、並行世界の「壊れる瞬間」を偶然見えてしまう少年・戒の苦しみが重くのしかかってくる。 だから、戒と美姫の甘酸っぱい掛け合いを楽しみつつも、嫌な予感が拭いきれず、そして最悪の展開が彼らを襲ってしまう。
負の連鎖を断ち切り、大切な人を救うために美姫が動き始めてからが本編の見せ場なのではと思う。てっきり戒を筆頭にした日常系ほのぼの話と思っていた当初の想像を遥かに上回るお話でした。世界をまたいで、女の子が頑張る命がけの恋のお話。うわー好みだった。
並行世界や時間軸が入り乱れて基軸の世界が今どうなっているのか混乱しつつも、頑張る美姫の姿は素敵で、見入ってしまった。
タグ:梨沙
2014-04-15 23:40
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