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五條瑛『上陸』 [読書]

上陸 (講談社文庫)

上陸 (講談社文庫)

  • 作者: 五條 瑛
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/04/15
  • メディア: 文庫

頭を使えば欲しいものが手に入る。次々押し寄せる外国人労働者にとって、日本は依然黄金の国だ。勤め人をやめた金満、若い前科者の安二、本国にせっせと送金する不法滞在者アキム。働いてもさっぱり金がない三人組は、同じ部屋で肩寄せ合って暮らす。密入国の手引きをやってのけた大きな秘密を抱えながら。


五條本って人と人との繋がりを大切にするなぁ、と改めて思った本でした。
ここに出てくる金満・安二・アキムは1Kの狭い部屋を借りて3人で暮らしています。この3人の関係が面白かった。「他人」にしてはお互いを知りすぎているし、「友人」に括ると何だかむず痒いしそんなに親しいわけでもない。途中からアキムが口にする「兄弟」って言葉が一番しっくりするんですよね。血も繋がっていないのだけど、家族…というより”兄弟”。気心が知れて、何でも言えて(まぁ、口喧嘩ばっかだけど^^)時々煩わしさもあって。3人とも口にはしないけど、すごくいい関係だなって思った。最初から彼らのこの生活は崩れてしまうとわかっても、この生活を、空気を壊さないで、と読み進めていくたびそう願ってしまった。
3人が人には言えない「秘密」を一蓮托生で抱えたことが彼らの繋がりを濃くし、またそれが皮肉にも蜜月の終わりのキッカケになったんですよね。

彼らの「秘密」に関しては、自業自得とも言えるけど情が入ってしまった今はそんな風には言えない!! や、完全に”悪事”だよ……うー…。
物語の最後でちょっと絶望しかけたんだけど、さすが五條さん!!! 文庫落ちした本すべてに書下ろしを入れてるって、もうありがとうございます!! です。ここに載ってる書下ろし「東京の雪」に私は救われたよー。ここで「兄弟」って言葉使われると、ちょっと何かこみ上げてくる。

 

8/18読了.★★★☆


タグ:五條瑛
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