『最果ての少年 熱砂の巨兵1』黒川裕子 [ライトノベル]
最果ての少年―熱砂の巨兵〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)
- 作者: 黒川 裕子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/08
- メディア: 単行本
突如現れた<白天馬>率いる黒い集団によって村を壊滅された少年・カルス。義姉・ジェリンと共に逃れた先には広大な砂漠が広がっていた――。復讐心を胸に少年は世界を切り開いていく。
黒川さんの骨太ファンタジー好き!
シリーズ第1弾。今回は熱が煽るような砂と灼熱の舞台でした。砂嵐によって閉じ込められた村から飛び出そうとしていた少年が、いきなり外の世界へと逃げざるを得なくなる苛酷な序章から始まります。きかん坊で、意外と泣き虫で、芯が強い少年カルス。現時点ではあまり好きになれない主人公かも…ですが、巻数重ねるごとに好きになるんだろうなと経験から思ってます。
しっかし再び骨太な物語が読めそう。今回も独特な世界観とそこに在るモノたちの描写が圧巻でした。「底のもの」や砂上の乗り物として動くかつて存在した「天馬」、「巨兵」の存在…。お気に入りなのは、「人鳥(ボシェリカ)」というか…モーラですが。人懐こくて、風貌に反して可愛く見えてくる。 色んな要素が一気に凝縮されているので、水面下で動きは見せつつもまだ1巻は序章という印象。 最後にカルスの正体も明かされ、今後、終末に向かっている世界をカルスがどう関わっていくのかとても気になります。
ところで、やっぱりこの人の書く人間関係性がどれもこれもツボでした…白天馬とカルスといい。もともと個人の魅力もありますが、人と掛けあうとさらに相乗効果増すといいますか…。セットだと月光君とビシュランとかね!野心溢れる叛逆者と幼い君とか…打算あってこその組み合わせですが、どうして肩に乗せるんだと。 単体でならシーバが好きです。口が悪くて、実力はあるであろうに何がしかの理由で落ちぶれてしまった青年。肝心なところで優しさを見せてくれるところが憎めない。カルスとの血と砂の誓いは若干唐突に感じましたが。あと白天馬筆頭に敵側が魅力的!白天馬の艶やかさは一体どうしたことか。
『メグとセロンVII 婚約者は突然に』時雨沢恵一 [ライトノベル]
シリーズ最終巻。わー終わってしまった! 大団円が決まっているシリーズだったけど、最終巻でぐんとラブコメが沢山詰まってて楽しかったです。セロンの(色々重なった)残念加減とメグのやきもきする姿がもーニヤニヤ。二人を見守る部員ズも彼らなりの優しさで上手くいくよう計らっているのに中々どうしてままならず…。特に部長の「悪役」ぶりには少しぐっときてたんだぜ。
セロンの超奥手ぶりと新聞部の活動が楽しくて仕方ないシリーズでした。青春! しかし『アリソン』『リリアとトレイズ』に続いた本シリーズもこれにて終了。足掛け10年も続いてるとは…。最終シリーズ(スピンオフ?)『オールスター(仮)』楽しみに待ちます。ここは…ここは、是非ともトレイズくんの挽回を見せていただきたいものです。希望。
『断章のグリムXVI 白雪姫・下』甲田学人 [ライトノベル]
シリーズ第17巻にて完結巻。 ある程度は覚悟していたはずが、馴染みの人たちがああも次々と最悪の方法で蒼衣たちから離れていくのを見せつけられると辛かったです。畳み掛けるように呆気無く命が潰えていって…もう脱力していく。神狩屋との対峙、そして全ての因縁の元である、葉耶の存在。物語の結末は最良とは言い難いかもしれないけれど、落ち着くべきところに着地した感じ。風乃と彼女の対話は印象深かった。「もしも」の世界を想像してみる。
そして雪乃が見出した答え。吐き出されたあの言葉は、蒼衣との関係性を的確に表しているなぁと、それを自覚して言葉に出した姿を見れば叫ばずにはいられなかったですよ!あの、雪乃が!! …兆候は数巻前から感じていたけれど、ここまでとは。「氷の女王」がなぁ。。苛烈な性格にい+αで魅力がどんどん引き出されていって、。
全てが解決したわけではなく起爆剤を抱えたまま閉幕。不安を煽るような結末、後味が何となく悪い気持ちになるのがこのシリーズらしさなのかなと思いつつ。
そういえば、雪乃の実姉である風乃は、裏に何か隠しているのかと思っていたけれどシリーズ中は蒼衣たちのアドバイザーとして安定して位置にいたような。もっと狂気めいた姿が出てくるのかなと思ってました(…いや、もう既になってるか) 。
『断章のグリムXVI 白雪姫・上』甲田学人 [ライトノベル]
しかし神狩屋の裏切り・離脱の痛手は大きいなぁ。最後の場面とか、もう本当に悪役だぞ…。勇路の件もちゃんと解決してないし、「彼女」の存在がここに来て疑問を持たせてきたりと、不安要素がばらまかれたまま。これで最終巻に臨むのか…。前シリーズのこともあって、安易なハッピーエンドは求めちゃいけないとは思っていても蒼衣と雪乃の無事は祈りたいです。。
そして前巻から登場した入谷さん、もっと前から出番があって欲しかったほどで…。
『六花の勇者』山形石雄 [ライトノベル]
六花の勇者 (六花の勇者シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)
- 作者: 山形 石雄
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/08/25
- メディア: 文庫
災厄をもたらす魔神復活を阻止するため六人の勇者が選定された。しかし実際に集ったのは「七人」の勇者だった…。シリーズ第1弾。魔神退治に集まった勇者たちが凶魔を倒しながら旅をする…のではなく、7人目の勇者=敵を探り合うという心理的状況に追いやられるところから始まる話でした。勇者が敵(魔神)を倒す。それ自体はシンプルで王道なのにミステリ面もあって中々気を抜けず、最後までハラハラし通しでした。”地上最強”と事あるごとに自負するアドレッドが奸計により孤立していく様子とか特に。
集った勇者はそれぞれキワモノだらけで誰もに疑いを向けずにはいられないし、仲間だと安心した途端に掌返して殺意を向けてきたり、その逆もあったりと翻弄されっぱなし。7人目の判明は衝撃的だったなー。でもその後、一安心していた矢先にまたぶっこんできたし。これは…これはあくどい引きだ!(叫)
勇者の中では猫言葉を使うハンス少年が気になるところですが、あまりキャラに肩入れしない方が後々ショックは軽いような気がする…。
『ベイビー、グッドモーニング』河野裕 [ライトノベル]
少年は突如現れた少女から死期を3日だけ延ばしたと告げられる。河野さんの新作読み切りは少女の形をした死神が登場する話。あくまで彼女は脇役に徹していて、メインは死が間近に迫っている、彼女に「宣告」された者たち。 絶対的な「結末」と前置きされても最初は半信半疑で、段々と切ない気持ちで占められる展開、けれど最後に思わぬ奇跡を起こしていく。 最後の物語は誰になるのか予感というか希望は持っていたけれどねぇ…ピエロとクラウン。 そして”死神”の仕事の延長線上にあるもの。後編2つの物語が特にお気に入りでした。
「生きたい」思いが重みとなって絶望と救いの両方になる瞬間。残酷な事実が悲しみを誘うけれど、優しい気持ちになれる本。大好きだなー。
弱い心と、優しい言葉と、残酷な言葉に関する物語。
嘘はきっと、弱い心から生まれて、優しい言葉にも、残酷な言葉にもなり得る。
世界中のすべての言葉が、優しい言葉になればいいと思う。
それが本当は嘘で、弱い心を育てたとしても。
『薔薇のマリア15 愛も憎しみも絶望も』十文字青 [ライトノベル]
薔薇のマリア 15.愛も憎しみも絶望も (角川スニーカー文庫)
- 作者: 十文字 青
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/12/28
- メディア: 文庫
ルーシーが『拾って』きたのは追手から逃げる不思議な女性で…?シリーズ第15弾。ついに最終章とのこと。今までのことを思えば、犠牲なくしては終わらないシリーズな気がするので今からやきもきしている。マリアも、マリアと関わってきた仲間たち皆が幸せな結末を迎えて欲しいのに頭の片隅で警鐘を鳴らしている。分かっていても”その時”を受け入れる覚悟は出来てない。ホント、信じるしかない。 今回初登場のハニーメリー(表紙左)は一筋縄ではいかなさそう…と思いきや攻略されてしまった感じが。彼女の背後に迫る例の人が気になります。トマトクンはどう出るのだろう。ZOOメンバー個々に思うところがありますが(ニヤニヤな意味も含め)今回ばかりはサフィニアの凄まじさに持って行かれました。
そしてアジアン可愛いよアジアン…!!もう、彼が一番のフラグを立ててると思うけれど、やっぱり大好きな気持ちは膨らむ一方だよアジアン…!単体というより、マリアに構っている姿が面白くて好きだと思うんだけど。戦闘では最強クラスなのに不意打ちに弱いヘタレな面がね!それ以上にマリアの乙女部分が色々ダダ漏れでにやけが止まらなかった。
『サクラダリセット7 BOY,GIRL and the STORY of SAGRADA』河野裕 [ライトノベル]
サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA (角川スニーカー文庫)
- 作者: 河野 裕
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/03/31
- メディア: 文庫
浦地の計略により街中から「能力」が消える。再び咲良田に能力を取り戻そうとケイが向かった先は…?で始まったシリーズ最終巻。もう、というか、ついに、というか。これでお終い。 物語は始まりがあれば終わりが来るものですが、気に入ったシリーズほど最終巻を読むのは嬉しい半分寂しい半分占めていて読み始めは少々複雑です。で、本シリーズも例にもれなかった。ただ、極上の物語を読めて幸せだったと。 主人公ケイと敵対する者は登場するものの、本当の意味の悪い人が出てこない話だったなー。前向きになろうと思える。
どれでも良いから何か能力を持っていれば、生きやすくなるのかなとは思った。そんな簡単にいくものじゃあない。個が見えにくいと感じたケイも、感情の起伏が無さそうな春埼も、全能のように見えた相麻菫も、皆が。 学生の頃に感じた言葉に出来ない感情をさりげなく形にして、動かしていった。感覚的にしか言えないけど、7巻通してのめり込んでたなー。 あーもう、本当にこの作家さんの紡ぐ話が好きだ。言葉の配置とか、会話の間とか、纏う空気が好き。この人の書く物語、この先も追いかけよう。
リセット。
その能力は、世界を三日分殺す。
喜びも悲しみも、笑顔も涙も、全部まとめて消してしまう。
そして、並べ直して、やりなおす。世界はもう一度、三日間をやり直す。
『祝もものき事務所2』茅田砂胡 [ライトノベル]
ありえない偶然を引き当てる体質を持つ百之喜太郎。彼が構える事務所に新たな相談事が…。彼と愉快な仲間達(?)が問題解決にいそしむシリーズ第2弾。前巻以上にぐったりしながら読み終えたような。前回の「吾藤田劇場」も凄まじかったけど、今回のはもう…。本シリーズは厄介なお家事情を持ち込む話なのかな。あまりの複雑怪奇な血縁関係に、太郎メンバーが食われた感じがする。いやっ、実質的な役割は果たしているけど、登場して活躍してないメンバーいたり、登場しても見せ場がなかったり…。なので事件はすっきり収まったけど気分はモヤモヤしたまま終了。多分お家関連の濃さに尾が引いてたのかな。。
あっ、挿絵は変わらず無かったけど紹介頁が増えてた!銀子さんイイ顔してるなぁ。
『天使たちの課外活動2 ライジャの靴下』茅田砂胡 [ライトノベル]
天使たちの課外活動2 - ライジャの靴下 (C・NOVELSファンタジア)
- 作者: 茅田 砂胡
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/03/27
- メディア: 新書
いつものメンバーにライジャが加わった本シリーズ。基本、前作「クラッシュ・ブレイズ」と同じ流れかもしれない。もっと学園にスポットを当てた話になるのか?と考えつつも、まぁ彼らなら枠に収まる行動は取らないだろうなと思える展開に。しっかし今回はビアンカの再登場が嬉しかったなー。こういうのは長寿シリーズならではの感慨深さなのかもしれない。一度は視力を失くして、手術により再び見えるようになったヴァンツァーの数少ない一般人の友人。個人的に月と黒すけの掛け合いはデルフィニア戦記から好きなので、彼女が入るとより面白いことになった気がする…。「認めてるけど、認めたくない仲」って言葉には納得。
ライジャのお師匠様はビジュアルからして強烈だった。この人と怪物夫婦が出逢ったら面白そうだなぁ…と思ったらそんな日が来るのも近くないかも? このシリーズは何かしら度を超えて突出した何かを持ってる人が多すぎる気がする(そして彼らは普通の一般人に紛れ込んでいるから、何だかおかしくなる)