『ハーモニー』伊藤計劃 [読書]
<大災禍>により破壊された世界が、新たに構築した社会は、全ての人間が等しく平等に、傷つけられることがない絶対的な安定した世界だった。世界に鬱屈した思いを抱えていた少女トァンは、謎めいた少女ミァハと出会い―。
ハーモニー。犯罪や病気の無い調和された幸福な世界。蔓延っている負の要素を徹底的に排除した社会は、わたしという魂が存在しうる世界なのか。考え込んでしまう一冊…。
全体的に、物語を構成する世界の在り方や、構築するまでに至った人の感情の発想が面白かったけれど、物語の主軸であるトァン・ミァハ・キアンの三人少女が居たからこそ、のめりこんで読みふけたのかな。
トァンが辿り着いた真理を、物語最後の会話を、頭の中で繰り返し咀嚼していく。 トァンに向けたミァハの言葉を反芻しながら、彼女の意思を、感情を思いはせる。
『虐殺器官』『ハーモニー』を読んだ今だからこそ、改めて、次の物語を読みたかった。殺戮の世界、調和のとれた世界を描いて、その次の世界はどのような光景が映っていたのだろう。本当に、残念だけれど、この本を読めて本当に良かった。
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