『ジヴェルニーの食卓』原田マハ [読書]
マティス、ドガ、セザンヌ、モネ―名を馳せる画家の人生と関わりを持った女性たちは語る。助手、ライバル、画材屋の娘、義理の娘―彼女らが目にした光景とは。
これは…これは! なんてものに出会ってしまったんだよ。静かに殴られたような感覚が、後からじわじわやってくる。表紙に惹かれて手に取ったので、あらすじを知らないまま読み始めたのだけど、あまりに自分好みすぎてよろける…。
巨匠たちと関わりを持った女性たちが語り部となり彼女たちの目を通して見る画家たちの姿、そして絵画の数々を見ていく。著者が美術関係の仕事をされてたこともあり、絵画の描写が綿密でかつ受け手に分かりやすく活き活き描かれている。文字からみずみずしい豊かな情景が広がっていく感覚に茫然としてしまった。凄い。
特に「美しい墓」「ジヴェルニーの食卓」には!鳥肌が立つ。画家と彼女たちが紡ぐ温かく切ない物語が、美しい舞台と絵画でより独特の世界を見ているような。一人の老婦人が語りだす、かつての少女がひと夏に経験したある画家との邂逅。マグノリアの花に込められた物語。何度読み返してもため息をついてしまう。
こんなにも満たされて、いつまでも浸っていたい時間にめぐりあえて幸せ―。
この世に生きとし生けるもの。命あふれるものたちに恋をして。
悲しみは描かない。苦しみも、恐れも。重苦しい人間関係も。
きなくさい戦争も、ただれた社会も。
そんなものは、何ひとつだって。
ただ、生きる喜びだけを描き続けたい。
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