『名探偵に薔薇を』城平京 [読書]
怪文書『メルヘン小人地獄』がマスコミ各社に届いた。その創作内容は、小人による無実の者への残酷な殺し方を描く、薄気味悪い内容だった。やがて、メルヘンをなぞったかのような殺人事件が起きて…? 名探偵の少女が暴く謎に秘された真実の感情とは。
…凄い。呆然としてしまう。読み終えてからしばらく、心の整理がつかなくて、ヨロヨロした…。
ここまで、頭をガツンとやられたのは久々の感覚です。素晴らしい物語を読めた幸せな気持ちと、登場人物へ馳せる悲しさや苦しい気持ちがないまぜになって、呆然とするしかなかった。(読み終えてから一ヶ月近く経つというのに、思い出すだけで苦しい気持ちが込み上げてくる。。引きずるなぁ)
絶望的な状況が、名探偵の少女による推理で鮮やかに逆転していく第一部に夢中になり、第二部では限りない哀しみで閉幕するラストに言葉もない。彼女が探偵であることの業、そして行く先を考えずにはいられない。幾度も衝撃を受けたけれど、全てを覆されるラストに打ちのめされて、余韻と呼ぶには重い読了でした。凄い。
たぶん私がこんなに惹き込まれているのは、勿論しっかりしたミステリの部分もあるけれど、前提は登場人物たちが向ける各々の感情なのかな。誰かを想い、思い合っているはずなのに理解しきれていない部分が、悲劇を引き起こしてしまう。誰のせいでもなく、もちろん名探偵のせいではない。けれども、彼女は業を背負う位置にならざるを得ないことがただただ、せつない。
著者はマンガ『スパイラル』のストーリー担当の印象しかなかったけれど、豊潤な推理ものも書く人なんだなぁ。他作も読むよ。
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