『ボトルネック』米澤穂信 [読書]
亡くなった恋人を弔うために東尋坊に訪れたぼくは断崖から墜落する。目覚めた時は住み慣れた金沢の街。不可解に思いながら家へと戻ると、出迎えたのは見知らぬ「姉」で…。「ぼく」の存在しない世界と向き合うことになる。
途方に暮れてしまったような不安定な気分を抱えたまま終幕。
目覚めた先は自分が存在せず、代わりに自分の知らないきょうだいが世界に位置していていたらどう思うだろう。主人公リョウの世界では起こっていた事がサキ(リョウの世界ではいない姉)の世界では起こらない(その逆も然り)。 死んだはずの人が、別の世界では生きている。自分の見ていたものが、どんどん覆されていくような、アイデンティティが崩されていくような感覚を感じてとても心細い気分で読んでいった。
暗い雰囲気のなか救いだったサキの存在が、終いにはどうしようもない引き金になってしまうところとか、本当とことん救いがない。 彼の踏み出す一歩を、サキのような想像力を働かせられずひとつしか出ない貧困さに打ちのめされてしまうね。真っ黒いお話、久しぶりで堪能した!
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