『ロスト・グレイの静かな夜明け』野村行央 [├コバルト文庫]
心残りを抱えて亡くなった者だけがたどり着く“霧の壁"の向こう。不慮の事故で死者となった少女アズサは“霧の壁"の向こう側で目覚めた。傍らには不思議な少年がいて…。
ある条件を満たした死者だけが辿りつけるもうひとつの世界。一度現世を離れた少女がふたたび生を手にして、見知らぬ町で生きていく。主人公が故人だから切ない話になるのかと先入観を持って読み始めたせいか、少しイメージのずれがあった。けっこう淡々とした空気でした。 蘇ったというより生まれ変わって第二の生を歩むイメージかも。それでも生前の記憶は持っているから、まったく違う人生とは言い切れないか。
ひととひととの繋がりの大切さや、かつて繋がっていた絆が解かれてしまうむなしさ。想いのベクトルに微妙なズレがあって少し心が重たくなる3人の物語、沁みます。アズサの物語には…どんな感情がついてくるのだろう。
世界観は好きだけど本質がぼかされたまま終了したので続編期待するべきかな? 一番モヤッとしたのが、アズサ知らない(忘れてしまった?)「心残り」の理由や表題の意味が本作で明かされなかった所。たぶんロスト・グレイは”霧の壁”の向こう側のことを指してるのかなとは思いますが…。でも、作品全体に漂う淡々とした雰囲気、静けさと「静かな夜明け」って言葉はすごく似合う。でも何だか消化しきれない部分もあってモヤモヤ。
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