『なりそこない』高里椎奈 [少女小説]
気晴らしに山のコテージで一人過ごすことにした彼に待ち受けていたのは、4人の男たちと…赤ん坊?! 何故彼らは鉢合わせしてしまったのか。この中に赤ん坊の誘拐犯がいるのか。一夜限りの夏休みが始まる。
「薬屋探偵」シリーズでおなじみの著者の新作。大人のほろ苦青春ものだった。 赤ん坊の誘拐犯は誰か?ということでミステリの面も見せつつメインは人間関係。初対面の男たち(と赤ん坊)という突拍子も無い状態だから最初から折り合いは悪いわけで、衝突が起きたり疑念を抱かせたり。それでも次第に妙な一体感も出来上がりかけたり…。名前も素性も分からない男たちが腹を探り合いながらもしぶしぶ家事をこなしていく場面は少しにやりとした。
十代やかつての十代が読むようなライトノベルって印象で少女小説の枠ではない気がする。かといって他のレーベルでも読めないような一作。この新レーベルは2冊目だけど、こういった路線の本もいろいろ読んでみたいなぁ。心の底に仕舞っていた嫌な感情が噴き出すくだりとか「あるある」な気持ちにさせられた。心の機微を丁寧に描く著者らしいなあと思いつつ。
「世界中に騙されていた思いがしました。裏切られたとさえ思いました」
「大袈裟だな、おい」
「幼稚でしょう?」
サンゴ自身、自分でも笑ってしまう。「母は僕だけの為に生きているのではなかった。 父は会社に行って帰って来るまで、消えているのではなかった。パン屋さんのおばさんも、学校の先生も、店や学校の他に帰る場所があった。それがショックでした」
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