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上遠野浩平『クリプトマスクの擬死工作 ソウルドロップ巡礼録』 [読書]

クリプトマスクの擬死工作 (ノン・ノベル)

クリプトマスクの擬死工作 (ノン・ノベル)

  • 作者: 上遠野 浩平
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2010/02/09
  • メディア: 新書

“ペイパーカットの正体を知っている”。財界の首領・東澱久既雄に沙遊里は言い放った。強大な権力者の東澱でも捕らえられない存在―生命と同等の価値のあるものを盗む怪人を俳優の少女がなぜ!?情報提供の見返りは、カリスマ映画監督だった父の遺作の解明。撮影前に不審死を遂げ、ストーリーが謎のままなのだ。私立探偵の早見と保険会社の伊佐は調査に乗り出す。だが、スクープ屋、ヤクザを従える老俳優も行動を開始、そこに飴屋という不思議な男も加わって…。未完成映画の秘密は解けるのか。忍び寄る怪盗の標的は誰か。

シリーズ第5巻。 相変わらず煙に巻かれたかのような気分にさせられる物語です。 上遠野さんの文章も久しぶりだからかな、西尾さんにも通じる言葉あそびに翻弄されました。 西尾さんはそれに遊び心が加わってエンタメ風に楽しめるのですが、この「ソウルドロップ」においては気を抜いたら本気で置いていかれるので、言葉の応酬を楽しむ…というよりも、彼らが話している言葉の内容を理解しようと必死に食らいついていこうとしてるのかもしれない。 つまりはまわりくどくて、屁理屈にも取れるような会話がたくさんですからね! それを読むのが楽しいんですが。
今回は、突如現れた少女に最後まで翻弄された感がありますた…。 10歳の女優。 強烈な存在感と舌鋒に、レギュラーたちもタジタジ(笑) なりゆきで、サーカムの伊佐、探偵の早見も彼女のお供として一緒に行動するのですが、この奇妙なトリオの珍道中が面白かったです、ビジュアル的にも想像するだけでククッと笑えてきてしまった。

物語の真相と、結末は―こういうのも有りなんじゃないかなぁと。 ”誰か”の一石二鳥の状態のような気がするし、シリーズ全体をみればそれほど進んだようには思わなかったんだけど、”彼”の本性…本質…求めている根底のモノが見えたような、気がします。 興味深かった。

ところで。 本シリーズでは伊佐&千条という素敵コンビがいますが、今回も良かったよこの二人…! 諸事情で離れ離れになったのに、離れているからなのか、千条の無意識ノロケ連発でぎょっとしました。一緒にいるときより() そうか、「ロボット」だからかストレートに言葉に出すにしても…最後の掛け合いとか、君、お母さんの領域だよ。 深読みすると、御堂の乗っていた車を止めた場面の、冷たい声音は、サーカムへの配慮もあるだろうけど何割かは伊佐さん危険な目に合わせようとした奴への怒り要素…?と勘違いしてしまいました。 はぁ楽しかった。


(2010/8読了) *拍手ボタン


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