梨木香歩『家守綺譚』 [読書]
庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多…本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。―綿貫征四郎の随筆「烏〓苺記(やぶがらしのき)」を巻末に収録。
洗練された文章と世界観。異界がするっと現実に馴染んでいるのが素晴らしいよ。
雨と共に訪れる友人との駆け引き、犬のゴローの愛嬌さ、サルスベリ、狸、小鬼…。
明治初期と思われる、静かで落ち着いた雰囲気がまた作品と調和している。
ひとつの話が数頁ほどしかないどれも印象に残った。
主要人物は「私」―綿貫と、近所のおばさんや和尚くらいで、植物や動物、異形のものに目がいってしまう(笑)
綿貫が彼らと自然に戯れてるすがたがおかしくていとおしくて、いいなぁと和んでしまう。
「行間を読む」作品でした。 大好き。
(2010/6読了)☆☆☆☆☆
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